KORANIKATARU

子らに語る時々日記

結局、素朴な時間が心を癒やす

到着が夜9時を過ぎていたので念のためホテルに電話を入れ予約の確認を行なった。
 
今回の旅でもeSIMを使い、それで電話もできるから便利なことこのうえない。
 
タクシー乗り場に向かうと順番がすぐにきて、運転手が明るく気さくに荷物を積み込んだくれた。
 
運転手の名はカルロス。
饒舌だった。
 
途中、サッカースタジアムがあり、いま試合が行われていること、大勢の人が詰め掛けさっきまで道路が三車線封鎖されていたこと、私たちにとってサッカーは宗教と同じだといった話をカルロスは熱心に語った。
 
ホテルまでの道中、そのカルロスが強く勧めてくれたのがレティーロ公園とシベーレス宮殿だった。
 
シベーレス広場を通りかかる際には、ダッシュボードから何か布を取り出し、レアル・マドリードが優勝した際にはこれを頭に巻いて皆で大いに盛り上がったといった話もしてくれた。
 
だからマドリード滞在三日目の朝、わたしたちはホテルから歩いてまずはレティーロ公園を訪れた。
 
ちょうど公園の入口の脇にレンタル自転車のポートがあったから、物は試しと登録を試みた。
 
スペイン語の画面をiPhoneで翻訳しつつ読み解いて入力を進める過程はまさに悪戦苦闘で、だから無事登録を果たしたとき、わたしは声をあげて歓喜した。
 
いつもの通り、家内が前を走ってわたしが後に続いた。
 
清涼なスペインの風に吹かれながら巨大な公園内を縦横に走ることは爽快そのもので、思わず笑みの浮かぶその瞬間瞬間は間違いなくこの旅最高の名場面の連続になった。
 
昼になって宮殿へと移動した。
あいにく最上階の展望エリアは月曜が休みだったがレストランのルーフトップバーが開いていたのでそこで過ごすことにした。
 
シベーレス広場を眼下に眺めて夫婦でお酒を飲み、隣席の方らと軽く言葉を交わす時間は安らかで、結局は素朴な時間が最も心を癒すのだとわたしたちは肌身で感じた。

2024年4月29日朝 レティーロ公園

2024年4月29日昼 シベーレス宮殿