KORANIKATARU

子らに語る時々日記

男三匹、家呑みの幸福

月曜日、500ml缶6本3セットを駅前のコンビニで買い近鉄百貨店で買ったイカ飯と貝類焼物の他に、雨も本降りとなりそうな宵のうち、傘も差すのでたかが10分の道のりなのに顔面歪む。

弟と親父囲んで男三人での家呑みが始まる。
飲み物が足らぬといった失態を犯す訳にはいかない。

腹の底から唸って力振り絞り、キングコングが鉄鎖引きちぎるようにコンビニのビニールを頭上高く掲げ上げ、重力など取るに足りぬと一喝咆哮、遥か道のりを踏破した。

親父は親父で同じく近鉄百貨店で寿司やら刺身やら肴を買い込んでいて、弟はビール買い込み、母は母で料理作っているものだから、平日月曜なのに、一体何の騒ぎだお祝いなのかといったほどに食卓が賑々しく彩られた。

親父囲んでテレビ見ながら、ビール党の男三匹、言葉数も少なにまずはゴクリゴクリとビールを飲み干す。

ゲップも出納まる頃、どうでもいいような会話が始まり、卓に載せられた食材に取り掛かる。

ふと不思議なことに気づく。
男三人水入らずで顔揃え、ありふれた日常の一コマのような家呑みをこれまでしたことなどなかった。
父子であれば、あって当然という光景と無縁であった。

私と弟は家を巣立って以来あちこちほっつき歩き、兄弟二人で父を囲み酒を飲むという一席を設けることについて無自覚であった。
あまりに当たり前すぎて、そのような場面がいくつもあったと思い込んでいた。

父は上機嫌で、母も楽しそうにしている。

我が身に置き換えて想像してみれば、その幸福感のようなものの一端を感じ取ることができる。

うちのこせがれ、長男と二男がいっぱしの男衆となり、二人顔揃えて、ふと家に帰ってくる。
男三人で酒酌み交わす。
他愛ない話をしつつ、私は、子らのこれまでの様々な面影を杯に浮かべながらぐいぐいと飲み干していく。
家内は家内で腕によりをかけて料理をこしらえるだろう。

こんな家呑みができるなら生きて頑張った甲斐もあったというものだ。

幸福は場所も取らない、時間も不要。
ちょっとした一隅一瞬にほんのり宿って、これでいいのだ、とすべてすんなり肯定してくれる。

ビールが尽きた頃、酔いもピークに達しつつあった。
ちょうど雨もあがり、いまのうちにと解散となった。

間もなく冬が訪れる。
とらふぐ、かわはぎ、かに、あんこう。
冬はオールスター級がずらりと並ぶ。
鍋つつく家呑みの温かみを煌々と感じつつ、子らの待つ家へと夜道を急いだ。