KORANIKATARU

子らに語る時々日記

甲乙つけがたい


若手の運転で豊中界隈を移動中ちょうど昼に差し掛かる。
検索するとここら庄内はラーメン天国とある。

目についたコインパークにクルマを入れ、グーグルマップでラーメン屋を探す。
一番近い場所にあった「しゅんのすけ」に向かうことにした。

カウンターに腰掛け、目に飛び込んできた濃口鶏塩ラーメンを2つ注文した。
どのみち若手君は私と同じものを頼むと決まっている。
お品書きにチャーシュートッピング250円とある。
どっちもチャーシュー入りね、と慌てて付け加えた。

私たちに引き続きギャル三人組が店に入ってきた。
ギャルが来る、つまりは人気店に違いない。

さもありなん、一口目から絶頂に達した。
ラーメンとはなんて美味しい食べ物なのであろう。
全身プルプル震わせながら、痺れるような恍惚に身を任せる。

もうどうなってもいい、ああラーメン。
ラーメン以外、心には何もない。
私は真白な状態となった。

塩ラーメン、白旗降参、また来よう。
箸を置き、私はそう詠じた。

世のどんな誘惑には抗えても、ラーメンにだけは為す術がない。

午後訪れた客先で、この感動を伝えたくラーメンについて切り出した。
事業主は笑って言った。
ここら庄内ではまずは「マルショウ」であるべきで、もしくは「烈火」と相場が決まっている。

もっと美味いラーメンがあるのか、と私は若手と顔を見合わせた。

何でもやります、仕事あればいつでも来ます。
私は事業主に即座答えたが、私もベテラン、魂胆にラーメンがあると見透かされたはずはない。


帰宅すると、長男が外出するところであった。
長男が私に向かって手を振る。
そしてクルリと向きを変え、自転車にまたがり走り去っていく。

その背中をしばらく眺める。

先日珍しく長男が体調を崩した。
近所の内科で診てもらったところピロリ菌感染を示唆された。

それで大慌て、阿倍野の田中内科クリニックに長男連れて家内がクルマで駆け込んだのであったが、田中院長は一瞥の後、ニコリ優しく微笑んで、単なる胃腸炎だよと長男の肩をたたいた。

点滴を受けた後、クルマで送るという家内を遮り、長男は電車で帰ると言い張った。
理由は、勉強したいから。

満塁になればバットの芯でボールを捉えたジャイアンツの駒田のように、長男は電車に乗れば勉強できる、そんな体質となったようだ。

結局は言うことを聞いてクルマで帰ったのであるが、学業においても歴戦の強者に伍す、なかなかの面構えとなってきている。


夕飯は二男と横並び。

揚げ出し豆腐、魚の煮付け、塩昆布乗った豆腐、シラスに大根のすりおろし、そしてサラダ。
カラダに優しいメニューである。
かたや二男にはこれにトンカツが加わる。

朝日新聞の天声人語に書いてあったが、日本の男性会社員の家庭回帰傾向が顕著だそうだ。
90年のバブル時に比べ、帰宅時間がグンと早まり外食回数がめっきり減って、家で夕飯を食べる「内食化」傾向が強まっている。

節約を旨とする堅実な生活志向の表れであり、家族とともに過ごす時間を優先したいという価値観の変化の表れなのであろう。

ちなみに、スーパーなどで惣菜や弁当を買って家で食べることを「中食」というらしい。

外食、中食、内食、この分類で言えば、うちの子らは生まれて以来「内食」が当たり前という暮らしであった。

奥さん探すなら、料理上手であることが条件の筆頭に来る、そんな風にならざるを得ないだろう。


星光ママらが集まって西大和が話題に上がる。

カリキュラムの洗練、面倒見、日々まだまだ向上し、微に入り細にわたってきめ細かく、なんだかとても、めざましい。
ますます進化していく西大和。

迷いなく星光を選んだ家庭でも、西大和のあれこれが人伝で聞こえてくるので少しは気になる。
それほどの発信力の西大和であり父兄の学校満足度も半端な数字ではない。

星光については泰然とし物静か、何についてもことさら声高とはしないので、逆の現象、西大和ママらが集まって星光が気になる、といったようなことは起こらない。

受験の現場事情知らない星光OBなどは、そのような昨今の西大和に疎い。
昔の構図のまま捉えてしまって刻々の状況変化について全くご存知ない場合まである。

あまりに西大和がインプレッシブなので関西最難関の他校の影が薄く感じられるほどであり、星光のご子息なのに西大和を選んで通う、ということまで起こっているなど聞けば仰天することであろう。

どちらが甲乙という話ではない。

両校とも、勉強を無理強いするような進学校の「あけぼの時代」はとうに終えた。
勉強にプラスαしてどのような付加価値を生徒に提供できるのか、ともにそれが問われる域の学校である。

星光であれば、教員も星光出身が多く、縦、横のつながりも自然発生的であるので、向上心も価値観も互い助けあう仲間意識も人品骨柄も、それらが空気のように浸透していき、しかも、それが出身者の心臓部、生涯の核となる。
そのような空気に触れて過ごす6年は得難いものであり、その先長く続く同窓の絆は貴重な財産となる。

一方の西大和は、リーダーの牽引力が強力だ。
熾烈なビジネスの最前線にあったとしても衆目集めるくらいの訴求力と説得力をもってことが為される。
トップダウンでパワーが隅々行き渡り、総合すれば、とてつもないエネルギーとなる。
リーダーの動きの軌跡が学校自身の姿かたちとなっていく。

型が確固としデンと構えて不易の価値を尊ぶ「保守」星光と、時代に合わせ円転滑脱、変貌すること厭わない「革新」西大和、なにかにつけて好対照な両校である。
ちなみに英語の綴りについて、星光では筆記体で書くよう指導がなされ、西大和ではブロック体でと指導される。

甲乙つけがたし。
互い参照しつつ、ますます存在感増すことだろう。

進学するにしても、カラダは一つ。
子供本人の直感に任せてどちらも外れのない優良校と言えるだろう。
ただ、制服の仕立てについては星光の方が優っているように思える。

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