この日も夕飯は良質のたんぱく質で占められた。
アワビにマナガツオにチーズなど。
世には肉以外にも栄養あっておいしいものがたんとある。
ビール一缶をゆっくりと飲むわたしの横に家内が座り、タブレッドでいろいろなインスタ写真を見せてくれた。
芦屋の女性がするゴージャスなインスタなど数珠つなぎでバラエティに富むインスタ映えを鑑賞し、最近つまらなさを増すテレビ番組よりはるかに面白いと思った。
なかには、嘘で塗り固めたとひと目で分かるようなものもあって、一瞬吹き出しそうになるが、その不毛な小細工の心労にそこはかとない憐憫を感じた。
まさに人間劇場。
インスタは人の真実を知るのにうってつけ、いま最も旬な教材と言っていいだろう。
そんな話をしていると、家内の電話が鳴った。
家内は西大和で長く保護者会の役員を務めた。
だから、いまも幾人もの母と交流が続く。
そのうちの一人からだった。
近況報告のついで、西大和の情報が数々寄せられた。
今年の高3は強力。
京大合格者数で日本一になったときの学年主任が現高3を率いている。
一線級の教師を外部からかき集め授業の質を高め、夜遅くまで指導にあたるから量も十分。
これにより、ただでさえ賢い逸材たちが現在進行形で力を伸ばし続けている。
そんな話を隣で聞いて思う。
かつて大阪星光にも急伸するような時期があった。
平凡な一私学をちょっとした進学校に押し上げたのは、いまは亡き都成神父の功績だった。
聞けば、海軍の生き残り。
そう言えば、柔和な笑顔の奥からにじみ出る覇気が半端ではなかった。
進学校にするだけではなく、野球部を甲子園に出場させようと本気で取り組んだというのも頷ける。
やってやれないことはない。
そんな凄味を漂わせ、面倒見も良かったから多くの教員に敬われかつ慕われた。
が、その神通力もいよいよ霞み始めたのか。
星光が最も賢かったのは30期代といわれ、塾関係者の見解によれば62期以降は明確に力が落ちているとのことである。
ちょうど西大和が午後入試を取り入れた時期が新旧交代の境目となったのかもしれない。
幸いにも、西大和の主戦級はもっぱら東大を受ける。
激戦の地は東に移動し、西にはその分のスペースが生じる。
京大志向が強い大阪星光にとっては直接対決を回避できるから好ましい。
もし西大和勢がこぞって京大を受けるとなれば相当な苦戦を強いられることだろう。
その他、西大和浪人生の話もあった。
卒業したのに担任の先生がことあるごとに電話をくれた。
だから、ずっと在学したままといった感じで、あっという間に浪人時代が終わっていった。
西大和生の団結は強く予備校でも一枚岩。
そこに甲陽や東大寺の仲間も加わった。
学校を横断したつながりは意義深く、一緒に励まし合って頑張ったというから微笑ましい。
しかし、そのクラスに星光生もいたはずだから存在感の薄いことが気にかかる。
一昔前なら、中心を為したはず。
星光生にとっては、微笑ましいといより寂しいような話である。
先日、ちょいと耳にした。
星光の落ちこぼれはめちゃくちゃ賢い。
予備校の先生はそう言った。
以前と変わらず大阪星光には優秀な生徒が多く集まっている。
ただ概して、数学はめっぽう強いが英語がめっきり弱い。
問題点は明確で、その解決は容易なことのように思える。
かつて都成神父は、真剣に甲子園出場を目指し野球のうまい生徒の獲得に乗り出した。
さすがに甲子園出場というハードルは高すぎたが、そんな経緯があるからか、星光の野球部はいまも引き続き案外強い。
シンプルイズベスト。
やはり答えは簡単といった気がする。