KORANIKATARU

子らに語る時々日記

例えれば内線電話で繋がっているようなもの

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改札口のデジタル時刻表を見ると、大阪行きの電車が0:40。
ちょうどこれに間に合う。
タクシーを使う必要はなくなった。

二人を改札口へ送り出し、私は歩いて今夜二次会の場となった自宅へ戻る。

二男が私の寝床で眠っている。
起こさず添い寝する。


野球が終わったのは午後9時。
とてもプロ野球とは思えないようなベイスターズの稚拙な守備に助けられタイガースが勝利した。
快心とはとても言えない、苦笑禁じ得ないサヨナラ勝ちであった。

球場を後にして甲子園筋を北上しつつタクシーを探す。
空車との表示があるにもかかわらずタクシーはなかなか停まってくれない。
球場に向かってまっしぐら、何台も通り過ぎていく。

信号待ちしているタクシーを見つけ、一目散駆け寄る。
男三人で取り囲めばもはやタクシーに逃げ場はない。


タクシーで自宅に到着する。
二男が玄関で出迎えてくれる。
長男は入浴中だ。

まさにお手の物とばかり家内が酒とつまみの支度をしてくれている。
男三人の飲みのお世話係として申し分ない働きぶり。
一手間二手間惜しまず我が家リビングをちょっとした飲み屋よりはるかにくつろげる空間としてくれた。

風呂あがりの長男がテーブルまで挨拶にやってくる。
天六のいんちょが直々、長男に対し勉学に関する様々な助言をしてくれる。
行儀よく直立し長男は何度も頷いている。

奇しくも我々と同じ学校の後輩にあたる二男に対しては、天六いんちょしか知り得ない学校教師のエピソードなどを披露してくれた。
二男はおそらく学校でそれを明日友達に言うだろう。

それらみな元をたどれば、天六のいんちょが発信源。
ここに但し書きを添えておかねばならないだろう。

そうそう、長男には藤浪晋太郎必勝祈願牛タン弁当、二男には上本のあなご重というおみやげをもらっていた。
うまいものを食べたければ何でも天六いんちょに頼めばいい。


この春に家を建てたばかりの副いんちょは我が家の造作に興味津々。
かねちゃんの質問に対し、家内が案内しつつ説明を加えていく。

以前車庫証明やらの関係でうちのツバメ君をかねちゃん宅に走らせたことがあった。
あれは金城城でした。
帰ってきた時のツバメ君の第一声がそれだっだ。

どれどれと写真を見て、なるほど金城城と私も納得、かつて帰り道をともにした級友が城主になったのだと感慨もひとしおであった。


この日、業務最終の訪問先は矢田であった。
夕刻早い時間、解放感にひたりつつまるで旅人みたいにそこらを当てずっぽうに歩いた。

甲子園球場での待ち合わせは午後6:30。
まだまだ時間があった。

途中、野球観戦用の食料を調達しようと阿倍野近鉄に寄るが、目ぼしい品はなかった。

結局いつもどおり、甲子園口商店街の名店で焼き鳥を二千円ほど見繕い、これでは足りないかもしれないと、ららぽーと甲子園の鳥プロで更に焼き鳥を二千円ほど買い足した。

先発ピッチャーはメッセンジャーとのアナウンスが球場から聞こえる。
午後6時、まもなく試合が始まろうとしている。

ちょうどそのとき着信があった。
かねちゃんからだった。

早く着いたのでもう球場の中に入っている、ということであった。
入り口となる8号門で落ち合うことにする。

かねちゃんからチケットを受け取り、その後をついていく。
席はバックネット裏、記者席に隣接する特上の場所にあった。

見ればすでに天六のいんちょが腰掛けていた。
いんちょ、副いんちょに挟まれての野球観戦となる。

かねちゃんの子はうちの長男の後輩にあたる。

学校の話などしつつ野球を見るが、すでにシーズンは終わったようなもの、ビール片手に秋風に吹かれつつ、どこか公園のベンチで友人らと話し込むような場となった。


我が家を訪れた天六のいんちょやかねちゃんがうちの子らにいろいろな話をしてくれたが、笑ってくつろぐ二男とは大違い、長男の態度は真剣であった。

秋の県大会では初戦で敗退したにも関わらず、県の選抜チームにと長男にも声がかかった。
ラグビーに一生懸命に取り組んできたことが彼なりに実を結んだといったような話であった。
学校とのスケジュールが合わず固辞せざるを得なかったが、ささやかなことであれ認められれば男子は意気を強くする。

まもなく高校生、次へのステップが始まろうとしている。

そんなときに、天六いんちょ、かねちゃんから「生きた言葉」をかけてもらえた。
参考どころかツボにはまってビリビリと大いに刺激になったに違いない。

かつて小さな小さな幼子であったとき、1を押せば職員の吉田さんと話ができると思って、電話器を見れば1を押し耳を澄ませていた長男の姿を思い出す。
内線の接続がない電話でいくら1を押しても吉田さんに繋がる訳がない。
それを知らず試していた長男の昔と今を見比べる。

いまは、天六いんちょ、かねちゃんだけでなく、星のしるべオールスター関係者全員が内線で繋がっているようなものである。

1を押せばあの人、2を押せばこの人、といった具合。
子らの内線ネットワークの充実に少しでも寄与できるのであれば父親冥利に尽きるというものであろう。

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