KORANIKATARU

子らに語る時々日記

致命的な脆弱をあらかじめ嗅ぎ分ける


まだ明るい夕刻、上方温泉一休に立ち寄った。
冷え冷えの外気が露天風呂入口を通じて内風呂に入り込み、視界塞ぐほどに湯気が立ち込める。
夢幻のごとくの非日常感がなかなか乙だ。
湯につかって愉悦まじりの吐息を漏らす。

今週も目一杯働き無事課題をやり終えた。
いよいよ週末。
休息へと向かう一区切りの時間に心のびやかとなる。

クルマ走らせ帰途につく。
窓を開け外気が流れこむままにし好きな曲をランダムに流す。
人目気にせず伸びやか歌ってひとりカラオケの時間を堪能する。


試験一週間前となってこのところ学校では朝7時前から先生がやってきて自習室を開放してくれている。
いつもとは違う、この非日常感が試験に挑む真剣味をかき立てるに違いない。
子らには間違いなく好作用。
星光生だっておっとり見えてやるときはやるのである。

リビングで試験勉強する二男の前に座り「森に眠る魚」を差し出す。
先日は「ハピネス」を読み終え、面白かったと感想を述べていた。
であれば次に読むのはこの本であるべきだろう。

試験が終われば読むといい、と簡単に説明を施す。

平穏な滑り出しで始まる。
良き未来を確信し期待に胸膨らませる若き主婦らが主人公だ。

やがて主婦らの交流が始まって、心の平和がかき乱されていく。
その様はまさに心理サスペンスであり読み出せば止まらなくなる。

交流の機会が増せば増すほど互い影響しあっていく。
根本には優越を競う心理が横たわっているので相互作用は良き方向には向かわず表面とは裏腹、互いが互いを拒絶し合うような歪な関係が生じ始める。

誰かの何気ない一言や仕草などが目に見えない波濤のように行き交い、互いの心の基盤をぐらぐらにしていく。
そしてそれぞれが孤立の度を深め、生活のバランスまでもが崩れ始める。

ある種の女性らが置かれた状況について深く学ぶことができ、ここで得られる観点は男子としてもいつか役立つことがあるだろう。

女子らを駆り立てる闘争のテーマについては男子としてやや唖然とするような他愛ないものに映りもするが彼女らの間では集団催眠にかかったみたいに何が何でもといったリアリティ伴う重大事なのである。

そのような心のメカニズムを知っていれば、倒壊しやすい建物を見分けるように、ある種の女性が有する致命的な脆弱をあらかじめ嗅ぎ分けるということも可能になるかもしれない。


そのように二男に言い残し、夜のロードワークへと出かける。

週末である。
運動がてら食事も済ませようとジュリエッタに向かった。

毎度毎度のこと普段着に過ぎてわたしはその場に似つかわしくない。
店の雰囲気を損なっているかもしれず、申し訳ないような気もするが、ご近所なので勘弁願えればと思う。

適当に料理をつまむが、あまりに美味しいものだからあっという間に白のボトルが空いた。
引き続いては赤で乾杯し飲み直す。

会話は尽きず、酔って気分よく連れ立って帰途につく間も話の止むことがない。
一晩経って思い起こすが、はて何の話をしたのだろう。

アルコールが分解されるみたいに、その場の話題も大半が忘却の彼方となったようである。
でも大丈夫。
今夜夕飯時、同じ話たちが巡ってくることになるはずだ。

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