自らを過信しすぎていた。
親方さんに勧められるままビールを飲み焼酎を飲み、まだまだ大丈夫だと思いつつ、しかしカラダは欺けない。
これ以上飲めば明日に響きかねない。
まだ宵の口であったが、急用思い出したかのように振る舞ってその場を辞した。
家に帰って汗を流し部屋着に着替える。
ソファに寝転んでやっとのこと人心地。
目の前にウンベラータ。
いまや吹き抜けエリアにその背を届かせるほどの枝ぶりとなった。
その向こう側、幹の左に二男が見え、右に長男が見える。
兄弟がウンベラータを挟み対面になって食事している。
一日を終えた解放感にひたりつつその様子をぼんやりと眺める。
その更に奥には家内が見え次の料理の支度に余念がない。
酔いがゆっくりと緩んでいく。
ウンベラータの花言葉は永遠の幸福。
そう思い出し、わたしにはこれがある、というような心強さに包まれる。
心のなか繰り返し言ってみる。
わたしにはこれがある。
荒波のなかにあって、地に足つくような安心感。
「これ」については端的な説明は難しい。
自負心のようなもの、それに基づく関係性のようなもの、と言えるだろうか。
わたしにはこれがある、その感の有無によって人生の手応えは雲泥の差であろう。
無ければ、まさに地に足つかない心許なさ。
その空虚は一時しのぎの気晴らしや虚飾でいっときは埋まるのかしれないが、所詮自らは欺けず、周章狼狽あらわになろうとかいうほどに足ばたつかせる日々を余儀なくされることになるのだろう。
そうそう、とわたしは思い出す。
みやげがあった。
いぬやしき4巻から6巻にベルセルク38巻。
子らに頼まれ、それらを今日調達したばかりであった。
起き上がって、彼らに告げた。
新刊はお風呂場にある。
思い浮かべていたとおりの笑顔がウンベラータの左右に見えた。