電車が動いていない、家内からそう連絡が入ってジムを早々に切り上げた。
いざとなればどこへでも駆けつけることができるようスタンバイした。
買い物帰りの家内をまずはピックアップした。
息子たちの様子を窺うが帰ってくるのはまだ当分先の話になりそうだった。
彼らが帰り支度を始める頃には電車の運行も復旧するだろうし、あいつらのことである、何があろうと這ってでも帰ってくるだろう。
そう思って帰途についた。
その日あった出来事についての家内の話が面白く、あっという間に家に着いた。
手分けし家の用事をしていると、意外に早く上の息子が帰ってきた。
電車が動き始めたタイミングでの帰宅になり足止めを食うこともなかったようだ。
ただ、駅は人で溢れかえり怒号が飛び交っていたという。
パニックに見舞われた際、頭に血が上った大阪人の荒々しさは世界屈指かもしれない。
食事の支度はまだ整わないが、腹減ったと息子がせっついた。
その息子に、さっとご飯茶碗が二膳お盆に載せられ差し出された。
左はイクラ丼。
右は卵かけご飯。
なるほど一瞬で整う飯である。
大小の卵の共演となった丼を息子がかき込み始めた。
ちょうどいい時間稼ぎとなったようで、息子をご飯で足止めする間に、ふっくらふわふわの手羽先がこんがり焼き目で仕上がった。
そして次々、料理が継ぎ足され、彼の胃袋へと呑み込まれていった。
作る方もあっぱれなら食べる方もあっぱれ。
これもまた見事な共演と言えた。
そのうち下の息子も帰ってきた。
第二陣の手羽先は焼きの精度で第一陣を上回っていた。
ガーリックの風味が食欲をかき立てる。
下の息子もご飯をお代わりすることになった。
デザートは大ぶりのイチゴにハーゲンダッツのバニラアイス。
わたしは息子ら二人の食べっぷりを眺めつつサラダをついばんだ。
時折、家内と顔を見合わせる。
わたしも嬉しいが家内はもっと嬉しい。
子どもがパワフルに食べれば食べるほど、親は手応え感じそれが嬉しくてたまらない。
食後、次の日のメニューが発表された。
朝はうな丼、弁当はステーキピラフ。
買ってあったマイセンのカツサンドはおやつだという。
今日も明日も明後日も、食が暮らしの中心、ど真ん中。
一般に「食わせる」と言えば「養う」という意を表すが、うちの家では読んでそのまま文字通り「飯を食わせる」という意味になる。