朝、職場に入るときはそれなりに張り詰める。
例えれば毎日試験を受けるようなもの。
今日もうまく答案を仕上げることができるだろうか。
長年同じことを続けているのに、ほんの僅かであるが緊張感を伴う。
そして蓋を開けてみれば今日も全行程を無事終えて出来栄えも悪くなく心地よい解放感に浸れるということになる。
そんな晴れがましいような夕刻、奈良での用事を頼んであった家内が事務所に戻った。
ちょうどいい、軽く一杯やって帰ろうとなって近所の料理屋に寄る。
ビールで乾杯し日本酒に進み、刺身を食べ天ぷらを食べ焼き魚を食べかき揚げを食べ水なすを食べた。
ささやかくつろぎの時間があってこそ明日もまた頑張ることができる。
店を出て信号を待っていると外国人ツーリストから家内が道を聞かれた。
家内が指名されたのは信号待ちしているなかもっとも身なりと人相が良かったからだろう。
そしてわたしたちが彼の地でしてもらったように家内は道案内を買って出るのだった。
聞けば北京からの来訪者。
明日は晴れるといいねと言いながら、目的地であるドラッグストアまで送って手を振って別れた。
帰途、スーパーに寄る。
フルーツトマトを買い、二男のデザートにするのにスイカかマンゴーかを迷い家内はスイカを選んだ。
果たして家に帰るとそこには宅配業者。
沖縄からマンゴーが届いたのだった。
スイカを選んで正解だった。
家内は大いに喜び、まもなく帰宅した二男は更に大いに喜んだ。