土曜朝、目覚めは午前10時半。
ベイコートのモーニングビュッフェの時間は過ぎていた。
長男が肉を食べたいと言うのでネットで検索すると長寿韓酒房という店が浮上した。
支度を整え駅方面に向かった。
あいにく昼のメニューに焼肉はなかったが韓国料理定番どころをあれもこれもと注文し、店員さんが単品よりセットの方がお得だからと言うのでそうすると4人掛けテーブルでは全て置ききれず隣のテーブルまで食の領土を広げることになった。
依然雨降って肌寒いなか、ポカポカに温まって汗ばんで、駅で息子と一旦別れた。
わたしたちはゆりかもめで新橋に出て地下鉄銀座線に乗り換え外苑前に向かった。
駅に到着したとき時刻は13:30。
秩父宮ラグビー場まで人がひしめき傘入り乱れるなか牛歩で進むしかなかった。
13:55、まもなく試合開始というところ、西ゲート3番後段9列目の席にようやくのこと辿り着き上に屋根はあったが霧雨が横殴りで降り注ぐので用意してきた雨合羽を夫婦揃って頭から被った。
選手が入場し整列し校歌斉唱は慶應からだった。
スタンドでも何人かのOBが起立し歌い、わたしたちは最後のケイオーケイオーというリピート箇所だけ口ずさんだ。
続いて早稲田。
大勢のOBがすっくと立ち上がり右腕を掲げリズムよく振り下ろし「都の西北」を歌った。
わたしは座ったまま口ずさんだが、秩父宮ラグビー場に鳴り響く「都の西北」に心揺さぶられ感涙しそうになった。
校歌が名曲であることは素晴らしい。
さあ、頑張ろう。
思わぬ所でわたしは初心に返ることになった。
寒さ厳しく、赤のホットワインを家内と飲みながらの観戦となった。
注目は早稲田3番小林賢太と慶應11番佐々木隼。
ともに芦屋ラグビースクール出身で前者は息子の一学年上で後者は同学年。
お酒が回って寒さ癒え、双方に声援を送りながら気迫溢れる慶應の連続攻撃に見入った。
今年、慶應の戦績は振るわないが早稲田を向こうに回すとまるで手負いの虎、全勝の早稲田を慶應が最後の最後まで押しに押すという大接戦の試合展開となった。
観戦を終え天王洲アイルまで移動した。
目的の場所TY HARBORは、天王寺アポロではなく天王洲アイルにあった。
予約の時間までしばらく間があった。
ブレッドワークス天王洲でコーヒーを飲み、パンが美味しくて有名とのことだったので息子らの分を含めあれこれ買った。
午後6時前、TY HARBORの水上ラウンジ席に腰掛け眼前の運河を夫婦で眺めながら長男の到着を待った。
赤ワインの一杯目が空く頃、息子が姿を現した。
店のおすすめメニューを家内が店員に聞き次々と注文していく。
そんなに食べられませんよと途中何度か店員さんの助言を受けるがもちろん店員さんはうちの息子がどれだけ食べるのか知る由もなかった。
ワインを空けシーバスのハイボールに移ってその頃わたしも家内もお腹いっぱいであったが、肉を食べたいと朝言った通り息子はまだまだ食べ続けわたしはその光景を見て幸せだと思った。
遠くに住む息子が元気で旺盛に食べる。
幸福は実にシンプルな話なのだった。
クリスマスのイルミネーションで照らされる運河沿いの歩道を食後、家族3人で歩いた。
年末に道後温泉に行こうと家内が息子を誘い話は決まったようだった。
降り止まぬ雨のなかタクシーを使ってベイコートに戻った。
二泊目の夜も部屋で二次会。
途中、家にいる二男からラインを通じ動画が送られてきた。
家のベランダでひとり焼肉パーティーをしている様子が映って思わず笑ってしまった。
朝9時から夜7時まで渡った模試を終え二男はいまリラックスタイムを満喫中なのだった。
西宮北口で試験を終えガーデンズに寄ってブロックで牛肉を仕入れ、炊き立てのご飯は隣家にもらってきたのだという。
結局この日も夜更けまで話は尽きず、明け方になってようやく家族を優しく包むような無言の静寂が訪れた。