入学式は急遽中止になった。
二男が朝一番にそう言った。
わたしたちは絶句し、コロナを心底憎むような気持ちになった。
そんなエイプリルフールで幕を開けた一日だった。
新入生やその家族で賑わう早稲田の構内各所で記念写真を撮り会場となるアリーナまで二男と一緒に歩いた。
そこで別れわたしたちはホテルの部屋で入学式の中継に見入った。
最後に校歌が流れあまりの感動でわたしの涙腺は緩んだが、早大応援部がするように右手を力強く掲げて家内が歌うものだから思わず笑って涙は引っ込んだ。
式後、二男から連絡が来た。
昼は新しくできた友だちと食べるとのこと。
浦和高校の男子とまずは仲良くなって、その辺りにいた同じ法学部新入生の女子二人を誘って計四人でグループになったという。
大阪、埼玉、富山、佐賀。
早稲田ではのっけから出身地が多彩になるのだった。
前日と同様、わたしたちは自転車を借り都内を走ることにした。
春爛漫とも言える暖かな陽射しにじんわり火照り、緑陰に入ればそこを渡る風がひんやりとしてまるで交互浴。
実に爽快。
嫌なことがすべて吹き飛ぶような心地よさであった。
家内の後ろについて南に向かい、四谷、青山、六本木、麻布を経て広尾で昼を食べることにした。
麻布スーパーマーケットの前に行列があったのでわたしたちもTacoTruckの列に並んだ。
ブリトーやらナチョスを買って有栖川公園のベンチに並んで腰掛けた。
まるで学生。
引き続き春の陽射しに照らされ緑の香りをたっぷり含んだ風に吹かれて、わたしたちは素朴なランチを楽しんだ。
腹ごしらえも整って三田キャンパスまで足を伸ばした。
受付で「保護者」と記帳し構内に入った。
ちょうど三年生の科目履修登録が始まっていて、長男と同学年の学生で学内は活気に溢れていた。
早稲田も慶應もどちらも素晴らしい大学。
夫婦で意見が一致した。