兵庫と大阪の行き来に自粛要請の出た3連休の最終日、わたしたちは県外に出ることを自重し、徒歩で有馬温泉に向かうことにした。
朝8時前、JR芦屋駅に到着。
そこから芦屋ロックガーデンを経て六甲山を駆け上がった。
季節は春。
ウグイスの声があちこちから聞こえて気持ちが和む。
その鳴き声を背に受けて家内がすいすいと登っていく。
ヨガとジムで鍛えているだけあって動きに淀みなく登れば登るほどその動きは軽やかになった。
わたしはその後を必死になってついて行くだけ。
心臓が口から飛び出しそうになるのを何度も抑えながら汗だくになってよじ登って這い上がった。
2時間ちょっとで頂上に達したからかなりのハイペースと言えた。
家内はまだまだ登れると頂上に立って笑ったが、わたしはもう懲り懲りだった。
カラダが冷えぬようすぐに下山し有馬温泉を目指した。
あとは下りが続くだけ。
心臓が平静を取り戻し、汗もひいて快適。
心身が一新されるかのような清涼感にひたって、ひと気なくしんと静まる山道を夫婦で歩く。
やはり登山は素晴らしい。
下山し目の前にあるかんぽの宿を訪れた。
が、日帰り入浴は自粛し取りやめているという。
一瞬途方に暮れたが、幸い歩いて5分の場所に日帰り温泉を見つけることができた。
御幸荘花結びの湯は昼に開く。
そこらをぶらり歩いて時間をつぶし、ようやくのこと目的であった有馬温泉にありつけた。
雲間の向こう、日の差す方をぼんやり眺めて金泉につかって無にひたる。
湯加減もさることながら、凛と澄んだ空気の冷え加減も絶妙。
陽射しで頭ぽかぽか、湯でカラダもぽかぽか。
あまりに心地よく一時間があっという間に過ぎた。
わたしが先に出てまもなく家内も湯をあがった。
一時間に一本のバスに乗り遅れぬよう、人で賑わう有馬温泉街を早足で抜けバス停へと駆け、無事、間に合った。
バスで両隣。
山間の地の空気と温泉にすっかり癒やされ、家内はとても満足そうな顔をしている。
また来ようと話し合いつつ、バスに揺られた。
JR芦屋駅のそばにあるイカリスーパーで買物し帰宅。
家に着いて午後2時半。
まだ一日の半分も終わっていない。
早起きすると人生の濃さが増す。
休む間もなく家内がすき焼きを作り、わたしはワインを開け、遅い昼食をとった。
山に登ると腹が減る。
家内がステーキも焼き始め、二人で分けた。
ゆっくり食べて飲んで、ほどよく疲れてただぼんやり。
テレビを観たり、帰宅した二男がリビングで勉強するのを眺めたりしつつ、どんぶらこ、どんぶらこ、至極おだやかな時間に揺蕩って過ごした。