終業後、家内の運転で大丸梅田店に寄った。
緊急事態宣言が発せられるとあって翌日から大丸は全館休業を検討。
そのため生鮮食品が2割から3割ほど値引きし販売されていた。
目的を同じくする者らが集まってきたからだろうか。
売り場は混み合いレジにはどこも長い列ができていた。
その人混みに一瞬怯むが、せっかくの機会。
作る側と食す側で立場を異にするとはいえ食材ショッピングが共通の趣味。
夫婦で励まし合い力を合わせ、京都で買う予定の肉を除き、果物、野菜、魚介を買い込んだ。
結局、地下1階の食料品売場から地下4階の駐車場まで二人で荷物を提げ二往復することになった。
引き続き運転は家内。
夕刻の阪神高速を西へと走り、半時間ほどで家に到着した。
手分けし用事を済ませ食卓について午後7時。
ニュースに目をやった。
歴史的瞬間だと言って、テレビのキャスターからは高揚感のようなものが伝わってきた。
職業柄、血が騒ぐ気持ちは分かる。
が、その挙動は不届きなものとして映った。
この宣言により、経済状況が逼迫し路頭に迷う方々が大勢出るに違いない。
出口は見通せず当面の算段もつかない。
そんな胸中を思うだけで血の気が引いて、もしかしたら明日は我が身。
歴史的瞬間であるからと言って、はしゃぐなどできやしない。
夫婦で質素な夕飯を終え、帰宅した二男の自主トレの様子を窓から眺める。
公園は無人。
薄明かりのなか走る息子の姿だけがくっきりと浮かんで見えた。
関東ではインターハイのブロック予選が中止と決まった。
近畿も同様の運びとなるだろう。
晴れ舞台を撮影するため買ったカメラの出番はなくなった。
そう思うからか、熱戦繰り広げられるフィールドを駆ける息子の姿が頭に浮かんだ。
そのシーンがやたらと鮮明で、きゅんと胸が締めつけられた。
しかし、すぐに思い直した。
元気にしてくれているだけで十分。
非常事態がほんとうに大切な事柄だけを浮かび上がらせる。
この期間を経て、わたしたちの目はかなりよくなっていくに違いない。