晴天に恵まれることは当初から織り込み済みだった。
青空に誘われどこか遠くへといった気持ちになるが、この日ばかりは踏みとどまらねばならなかった。
裏庭の草木がいつの間にやら無秩序に生い茂り、隣地へとその繁殖域を拡大させようとしていた。
他所様に迷惑をかければ円満には暮らせない。
「日曜日にはきれいにしますよ」。
自ら進んでそう申し出たのであるから、その前言を翻す訳にはいかなかった。
ジャージに全身を包み、頭にはターバンのようにタオルを巻いた。
軍手を装着し右手に万能鋏、そして左手に万能目を握り、わたしは裏庭に巣食う「無秩序」の中へと足を踏み入れた。
家内は後方からわたしを支援した。
オリーブの木を斬り倒し、快刀、乱麻を断つがごとく、とぐろを巻く蔦や雑草をことごとく除去していった。
それを家内がごみ袋へと封入していき、時折、わたしに水を差し出した。
自然の真っ只中にあるからだろう。
原始の活力が無尽蔵に噴き出した。
「反雑草」なる立ち位置で、わたしも自然の一部に同化したようなものであった。
そこに、戦況を窺うかのようにアシナガバチやクマンバチが飛来して鮮やかな紋様の蝶々が幾種も舞った。
陽光がさんさんと降り注ぎ、汗がしたたり、水がおいしく、そして実に静かであった。
三時間ほど経過して、ゴミ袋は数にして十以上にのぼった。
それらはやり切ったという充実感の塊とも言えた。
シャワーを浴びて、引き続く晴天のもと、こんなに天気がいいのだからとベランダで肉を焼いて食べることにした。
家内がセッティングしてくれて、わたしはスパークリングの封を開けた。
牛長の豚肉を焼き、野菜で包んでたっぷりニンニクやら各種具材をそこに潜ませ、がぶり大口を開けて頬張った。
美味にほころぶ表情が向かい合ってさらにほころび、勢いを増した午後の光が二人の笑顔を明るく照らした。