タコちゃんにおごってもらって、店の前で別れた。
大阪星光がもたらしてくれる恩恵にしみじみとしたものを感じつつ、33期の面々について思い巡らせた。
来年ではや卒業後35年となる。
そろそろマスク着用の義務も解かれるであろうから、その機を捉え、星の光の再集結を図るのはどうだろう。
すこし歩いて曽根崎通りからタクシーに乗った。
車窓の向こうを過ぎる景色に目をやって、今日一日を振り返った。
長い一日であったが、無事に乗り越えて最後にはおいしい食事にもありつけた。
ああ、やれやれ。
手帳を繰って今日クリアした課題を眺めつつ、安堵感に浸った。
過去を遡れば手帳に記された課題は膨大な数にのぼる。
それを着実にこなし踏み越えてきたのであるから、手帳を手に自身を褒めたいような気持ちになった。
道順の確認の際、運転手に方言の名残があることに気がついた。
お国はどこですか、と聞くと鹿児島とのことだった。
鹿児島を十年以上も前に出て、大阪にやってきた。
先ごろまで北新地で飲食店を切り盛りしていたが、いつの間にかハンドルを握る身になった。
そんな話を聞きつつ、鹿児島についてわたしは尋ねた。
女房とあちこち旅行しようと話し合っているから、名産や食べ物についていろいろ情報を得ようと思ったのだった。
運転手は言った。
九州だと食べ物は絶対に博多がいいですよ。
他は焼酎文化だが、博多にはおいしい日本酒があり、そのお酒に見合って料理のレベルも高いから、博多がおすすめです。
北新地で飲食店を経営していたというからその言葉に説得力があった。
なるほど博多。
そのワードがわたしのなかに刻まれた。
やはり、なんでも話してみるものである。
そう思った。
それで何か実のある情報が降って湧くのであるから、ちょっとした雑談も侮れない。
手帳には記載しないが博多については遠からず、女房とともに課題遂行ということになるだろう。