睦月も下旬に入って煩忙度が増してきた。
金曜日、総出で仕事に掛かり、だから家内も加勢した。
和菓子や柿の葉寿司など、携えた差し入れも気が利いていた。
十年に一度という最強の寒波が列島へと迫っている。
夜になって冷え込むが、わいわい皆で業務をこなす雰囲気が熱源となるからだろう。
寒さなどどこ吹く風、というものであった。
週明けの目処がたったところでわたしたちは先に事務所を後にした。
食べて帰ろうとなって、食べログ上位にある和ダイニング ハタケナカという店を予約した。
事務所から歩いて数分。
テーブル席に案内された。
一人で料理するのでお待たせするかもしれない。
予約の際、そう告げられていたから出だしであれこれ注文することにした。
しかし、一品目のイカゲソの登場に40分も待たされるとは思ってもみなかった。
だから、まだ調理にかかっていない注文をキャンセルし、勘定を頼んで店を出た。
家内が目をつけていた店が長堀通り沿いにあった。
電話すると間もなく席が空くというのでそこへ向かった。
カジュアル割烹イイダの店主が店の前で迎えてくれた。
待機席に案内され、いきなりいたれりつくせりといった感じで、ワインが注がれお通しの料理が運ばれてきた。
店主のイイダさんを筆頭に若き男子5人がテキパキ一糸乱れぬ的確さで動き、接遇も洗練されていたから、心に沁みた。
まるで鍛え上げられた体育会のチームの動きを見るようで小気味よく、料理もワインも美味しかったから気に入った。
調度もいいものを使っていた。
家内が店主のイイダさんに尋ねた。
この椅子はYチェアのものに似ていますね。
と、イイダさんは「これはほんもののYチェアです」と言って、椅子のひとつを裏返しその表示を指し示した。
最初はイケアのものを使っていたのですが、椅子はやはりいいものを揃えようと思って頑張りました。
このように様々なところに店をよくしようとの強固な意志が感じられて好感が持てた。
若いのに殊勝なことである。
なるほど客層もいい感じの人ばかりだった。
また来ますねと言って家内と店を後にし、電車を使って帰途に就いた。
寒波はひたひたと近づいていた。
が、いい食事をしたからだろう。
寒さなどどこ吹く風というものであった。