日曜日は息子たちのために料理を作る。
だから買い出しのため元町に行く。
家内はそう言った。
空晴れ渡る神戸の街を家内がハイペースで闊歩する。
わたしはランニングを終えたばかりだったから足が張り、ついていくのが精一杯だった。
山からも海からも冷たい風が吹き付けるが、汗ばんだ。
リストどおり手際よく買い物を完遂し、神戸でのロードワークを終え家に戻った。
簡単に昼を済ませて、今度は地元のジムへと向かった。
金曜日にジムを休んでしまったからその代替だった。
泳いで筋トレしてサウナに入ってマッサージチェアに横たわり、のべ二時間半を過ごし、また家に戻って出かける支度をしてから駅でタクシーに乗り、塚口までと行き先を告げた。
塚口サンサン劇場の自動発券機で予約してあった「犯罪都市THE ROUNDUP」のチケットを受け取り、上映の時間までそこらをぶらついた。
塚口にこのほど誕生したSOCOLAのなかを歩き、駅前のメガネの三城で掛けている眼鏡を洗浄してもらい、あれこれ試着し家内と写真を撮り合った。
観てエネルギーが充填される。
「犯罪都市THE ROUNDUP」はそんな映画と言っていいだろう。
目を背けたい場面が少なくなく、家内にとっては悪趣味な映画だったかもしれない。
が、期待どおりわたしは元気になった。
世知辛い世を渡るうえで、内に眠る荒ぶるマッチョをときには呼び覚まさねばならない。
そういう意味で韓流映画は効き目抜群なのだった。
だから夕飯は肉で決まりだった。
食べログを見るとここらでナンバーワンは「じゅん亭」だった。
幸い8時過ぎには二人分の席が空くというから予約した。
SOCOLAの上島珈琲で時間をつぶし、8時5分発の阪急電車で塚口から武庫之荘へと移動した。
二階の座敷では先客の酒盛りが宴もたけなわという状態に至っていた。
どこかの草野球チームのようであった。
幅広い年齢層の男たちがグロテスクな猥談で盛り上がって野太く笑い、別席には女性もいて子どももいたから、そのデリカシーの欠如極まる下品の暴走にわたしたちは絶句した。
ある種の「男」たちに潜在する禍々しいような本性が露骨に開陳されているも同然で、恐怖すら覚え、わたしは男なのに胸を両手で覆いたくなった。
幸い彼らの宴会は制限時間の二時間を過ぎたところだったようで、「男」たちは二次会の場へと移動していった。
わたしたちはおぞましい場面のエンディングに出くわしただけで済んだのだった。
じゅん亭の焼き肉は素晴らしかった。
どの肉も色艶よく味もよく、相当仕入れにこだわっているのだろうと窺えた。
ここ最近わたしたちが訪れた焼肉屋のなか群を抜いてナンバーワンと言ってよかった。
しめに食べた盛岡冷麺もやみつきになるほどの美味だった。
座敷席になると宴会客と同じ空間を共有することになる。
だから今度は早めに連絡し、一階の準個室的なテーブル席を予約しよう。
そう家内と話し合った。
武庫之荘駅の北口からタクシーに乗って帰途についた。
今度は息子たちも連れてこよう。
夫婦の話題は必ず最後、息子へと行き着くのだった。
近場で過ごした中身濃厚な土曜日はこのようにしてハッピーエンドで幕を閉じた。