業務を終えたとき時刻は午後八時を過ぎていた。
ジムは休みで武庫川を走るには遅すぎる。
かつ、家内は芦屋の水春に出かけていて留守。
オイルマッサージの予約が取れたとのことで、今頃、名人パクさんの施術を受け夢見心地に違いない。
それに月から水までわたしはノンアルで過ごしていた。
ここまで条件が重なれば、今日くらいはいいではないか、となっても責められない。
業務先を後にし、くつろいだ空気が夜風に乗って漂い始めた本町のビジネス街を歩き、通りかかって目が合った居酒屋の引き戸を開けた。
匿名の一中年男性となって、ビールを飲んでおすすめの品をつまむ。
続いて愛媛の地酒に移ってとても気分がいい。
お酒はぬるめの燗がよく、ルールは緩めの感じがちょうどいい。
すべての役割から解放されて、無思考のままふわふわとした浮遊感に身を預ける。
これもまた生きた心地。
週末は女房と飲もう、そう思った。