昨年のGWは東京からの帰りに熱海、下田、三島と伊豆半島を三泊四日で渡り歩いた。
今年は東北地方を旅先に選んだ。
渋滞を避けるため朝8時にはタクシーに乗って伊丹へと向かった。
が、いつも以上にスムーズ。
運転手が裏道を駆使して30分もかからず空港に到着した。
だからゆっくり朝食の時間を楽しんだ。
これから旅がはじまる。
そう思うと気持ちが華やぎ、食欲が増した。
予定どおり昼過ぎに青森空港に到着した。
飛行機からプリウスに乗り換え、まだ桜が咲き残る弘前公園をまずは目指した。
日暮れまでに十和田湖、奥入瀬へと向かう必要があったから、ゆっくりはしていられなかった。
公園の出店で名物とおぼしき黒こんにゃくやご当地ウインナーやいか焼きなどを歩きながら食べ、さくらまつりの雰囲気を満喫し一時間ほどの滞在でそそくさと弘前を後にした。
十和田湖を一望できるスポットは幾つもあった。
そんな中「秘境感」を味わうなら御鼻部山展望台が群を抜いていると思われた。
そして弘前からそこへと続く林道は思惑以上に人跡未踏という次元にあった。
道は狭く暗く、つづら折りの登り道が連続しまさに酷道と言えた。
もちろん他に走るクルマはなく、また新緑の季節にふさわしい鮮やかな色合いとも無縁で、行けば行くほど鬱蒼かつ荒涼とした樹海の度合いが深まっていった。
日没の時間までまだ間があった。
しかし、道を覆う樹々が光をさえぎり奥州最果ての地の寂寥感が募るばかりだった。
車内、夫婦で肩寄せ合うようにその心細さに耐え、いつしか互いの口数は減っていった。
だからこそ、突如開けた十和田湖のパノラマは壮観だった。
世界が出現した。
大げさではなくそんな感動を覚えてわたしも家内も呆けたように湖面を眺め息を呑んだ。
夫婦で共有する体験としてどんなアトラクションよりも素晴らしい。
旅は序盤から最高潮に達したのだった。