KORANIKATARU

子らに語る時々日記

お隣さんち、奥さんが帰ってきたよ

指定の時間より早くに着いた。

さて何をして過ごそうか。

 

と、回転寿司屋が視界に飛び込み、わたしは迷わず店へと飛び込んだ。

ネタを選びに選んで数皿つまむうち時を忘れ、いつのまにか汽車の到着時間が過ぎていた。

 

慌てて店を出て新幹線の乗換口に向かい、大量に押し寄せてくる人波を正面に見据えまもなく姿を現すであろう家内を待った。

 

先にわたしを見つけて笑顔を浮かべる家内がいままさに改札を抜けようとしていた。

駆け寄って、改札を出たところで荷物をすべて受け取った。

 

これがわたしの役割だった。

 

新大阪駅から神戸線に乗り、席を見つけて家内を座らせ、わたしは立ったまま荷物を提げて一歩の距離を置き付き従った。

 

地元の駅を降り、いつもの道をたどって家へと向かうが、もはや、春。

草いきれの残り香などが夕暮れの路上に立ち込め、日中の日差しの強さが偲ばれた。

 

夕飯は家内が買ってきたものを二人で分けた。

火曜日だからわたしは飲まず、家内は昼にワインを飲んだといって、夫婦揃ってお茶で済ませた。

 

質素な食事をとる間も引き続き、家内の話に花が咲いて春爛漫。

旅の道中について前後脈略なく微に入り細に入り語られて、それら色とりどりの断片がコラージュとなって、やがて旅の全貌が鮮やか一望のもと見渡せた。

 

隣近所も喜びをもって気づいただろう。

「お隣さんち、奥さんが帰ってきたよ」

 

公園で野鳥が鳴くのと同じこと。

家内の二万語を欠いては近隣住民も調子が狂うというものだろう。

2023年2月28日昼 谷六 文目堂

2023年2月28日夕刻 新大阪駅 がんこ寿司

2023年2月28日夕飯  家内の持ち帰った弁当とヤマサちくわ

2023年2月28日 せとか,はるみ,いちご,野菜など旅先から三箱に分け西宮・本郷・高円寺に向け発送