KORANIKATARU

子らに語る時々日記

手にしていたのはまさに虎の子だった

タイガース戦がストレス解消にもってこい。

そう長男が言ったから、彼を喜ばせようと思ってわたしはチケット入手に動いた。

火曜日の夜のことだった。


ネットで検索すると、VIAGOGOというサイトでこの週末の阪神巨人戦を買い求めることができた。


10分以内に購入手続きを終えないと他の人に権利が移動する。

そんな表示が流れ、典型的なダークパターン手法ではないかと思いつつまんまと急かされ、キャンセルが不可であることに同意して購入を果たした。


深く考えず、購入時、わたしはカードの決済者である自分の名前と息子の住所を入力した。

チケットが息子あてに郵送される。

そう思い込んでのことだった。


翌朝、チケットの受け取り方法を報せるメールが届いた。

そこに「神田郵便局留め」との記載を見てわたしは大いに狼狽えた。


郵便局で受領するのであれば身分証明書の提示が必要となる。


つまり神田までわたしが行かねばならないということであり、しかし、そこに記されているであろう住所は息子の住所であるからわたしの身分証明書では不一致が生じてしまう。


だから即座にわたしはVIAGOGOに対し宛先の記載変更を依頼した。

ところがなんと「すでに販売者から発送済み」であり、「時間がないとの理由で販売者は宛先変更に応じてくれない」そんな返答が届いただけだった。


念のため問い合わせた神田郵便局の見解は、不一致があれば郵便法により絶対に渡せない、の一点張りだった。


ああ2万円。

こうした形で失う2万円は重くてつらい。


お金の価値を再認識するためこのような目に遭ったのだ、その授業料なのだと自分に言い聞かせて認知を変え2万円の喪失を呑み込むしかなかった。


木曜日になってVIAGOGOから郵便物の追跡番号が送られてきた。

ステータスを確認すると、神田郵便局にて保管中との表示があった。


それでダメ元。

一縷の望みをかけわたしは神田郵便局に問い合わせた。

もしかしたらこちらの要望どおり、宛先変更がされているかもしれない。


「実際に荷物をみてください、受取人の住所と氏名が息子のものになっているかもしれないので」

そう頼んだ。


しばらくして神田郵便局から折返しの連絡があった。

その郵便物には受取人として、わたしの名前が平仮名で書かれているだけとのことだった。


つまり、住所の確認は発生せず、わたしが行って免許証を見せれば、チケットが手に入るのだった。


それでわたしは急遽、上京を決めた。

どのみち月に一回は東京へと出かけている。


土曜の昼前に東京駅に着いた。

雨の降るなかタクシーで神田郵便局に向かいゆうゆう窓口で郵便物を受け取った。


三井住友銀行のATMに置いてある封筒が郵送に使われていて、受取人としてわたしの名がとても下手で粗末な字で記載されていた。


その場でわたしは封を破って中身を確認し、無事に巨人阪神戦のチケット2枚が手に入ったことを息子に伝えた。


タクシーが東大赤門前に差し掛かり、ここから息子の下宿は目と鼻の先にあった。


まさに虎の子。

わたしはチケット2枚の写メを息子に送って、もうすぐ着くとメッセージを送った。

2023年6月30日 翌日の上京に備え息子たちに肉など準備

昔の写真 2007年 親のスマホでウルトラマンを撮影していたのは彼