KORANIKATARU

子らに語る時々日記

家計の防御率

福山通運阪神支店から巨大な車両が2台路上に姿を現し前を行く。
東の空に下弦の月が見える。
深夜のラジオでは桜の見頃は今週迄という。
西長州の交差点で、前の車両は、静かに左右に別れ、一方は北へ、他方は南へと二手に分かれた。
銀河鉄道999の1シーンのようだ。)
私は、東へ真っ直ぐ進む。

事務所近くの駐車場でクルマから降りる。
春の明け方、涼しい風が気持ちいい。
野田駅前の立ち食い蕎麦屋では路上でおじさんらが食台囲み酒盛りを始めている。
一仕事終えた後なのだろう。
皆がぐっすり寝静まる時間、夜半に起きて仕事する人はいくらでもいる。

早起きを基礎とする規則正しい生活は、地味で単調で代わり映えのしない毎日である反面、確固として着実、守りの堅い暮らしであるとも言える。
朝起きる時間と、収入はどうやら関係なさそうだが、貯金の額くらいには相関があるかもしれない。

世には、溢れ出すパワーがとどまるところを知らずド派手絢爛なホームランを夜な夜な放つような、驚愕の強打者のような高給取りがナンボでもいるけれど、その打球の飛距離、つまり稼ぎと早起きなんて全く関係がない。もちろん打球の速さ、つまり稼ぐ速さと早起きも全く関係しない。

ぼてぼてのゴロしか打てない者が早起きしたところで、あんなミサイルライナーや天まで届くような大飛球を、放てるもんではない。つまり稼げるようになるわけではない。
手取り足取り教えられても無理である。真似して真似られるもんではないということだ。

だからといって、自暴自棄になることはないし、幻の蒙古打線といった打ち出の小槌を夢想し現実逃避してもいけない。
まして、強打者ぶってぶんぶんバット振って、飛距離出している風を装うことなどしてはならない。
仮面ライダーごっこする子供はかわいいが、ボールにかすりもしないのに強打者ぶるのは恥ずかしいことである。

要は、名将が言うところの、投手力中心の、手堅く塁を進めて競り勝つ、守りの野球で臨めばいいのである。
簡単に言うと味気ないが、地道に稼いで出費を抑えるということである。

巷にも、脅威の防御率を誇る名投手がいくらでもいる。
球数を少なくし、無難に相手をゼロに封じ続けるエース級がずらりと顔を揃える。
その投球術をこそ見習おう。
何もかっ飛ばす必要などなく、ポーカーフェイスで抑え切ればいいのである。
ゼロ行進の桁が増えても人前ではガッツポーズなど取らず、淡々と寡黙に投げ続ければいいのである。

そう、抑制する力が大事である。
感情を静め心の動きに注意し、周囲に目を配り、日々のよしなしごとに淡々と向かう。
他人様の前で決して喜怒哀楽なんて顕にしないし、大言壮語もしない。
その過程で凝縮したものが仕事の中身を彩り鮮やかに照らせばいいのではないだろうか。
秘めた深みと強さが醸し出るいい雰囲気をまとった君たちと仕事の話に興じる日々が待ち遠しい。

言うまでもないけれど伴侶は、ブンブン振り回すだけ振り回して浪費しかすりもしない打者より、手堅く粘って何とか投げ抜ける投手タイプがいい。