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私が大学生であった当時、新聞紙面でここまでその苦境が報じられるようになるなど想像すらできなかった。
超一流ではないにせよ日本を代表する存在であることは間違いなく、目のつけ所がシャープですというキャッチフレーズとともに独特の異彩を放っていた会社であった。
たかだか二十数年でその存亡をさえ案じられ救済策について日々報道されるまでに経営が悪化するなど誰に予想できただろうか。
土曜日の朝日新聞にシャープの衰退と大阪の凋落を重ね合わせて論じる記事があった。
ここ10年で2,400もの会社が大阪から転出し多くは東京を本社とする会社となった。
シャープでは92年に2,400人を数えた本社従業員が今は800人にまで減少した。
お膝元である西田辺駅前の飲食店はかつて300あったが軌を一にするように激減しいまや100を超える程度に過ぎない。
大阪の経済は地盤沈下の様相でありシャープもまた同様に見える。
自分がいまその会社で働き盛りに差し掛かった者であると想像してみる。
就職の際そもそもシャープに内定得られるのであれば他にも選択肢はあったはずであり、こうなると分かっていれば他の会社を選ぶべきであったとまずはそれを悔み、身内から寄せられる心配の声に平静装って応対するも心中は気が気でなく、このような苦境を招いた経営陣への怨嗟を酒場でまき散らすといった自暴自棄一歩手前といった風になるのかもしれない。
転職するにしてもより好条件で抱えてくれる場所などなかなか見当たりそうにもない。
守りの姿勢ではそのままズルズルと「地盤沈下」の流れに巻き込まれかねない。
逡巡を繰り返しやがては腹を括り何か重大な決断を下すのであろうか。
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帰途商店街の満海であんこうとかわはぎを買う。
鍋の季節である。
夫婦&二男の顔ぶれで鍋をつつく。
あんこうの白身がふっくらぷりぷりでほっぺが落ちる。
食後、二男とロッキー・ザ・ファイナルを見る。
二男は感動した。
もちろん私も。
最愛の者を失い老いていくロッキーがする決断に心震える。
歳をとっても心は老いることがない、そう証明するかのようにどれだけパンチを浴びせられても前に突き進んでいくロッキーの魂が画面から溢れでていて何度も感涙しそうになる。
ロッキーが息子に対し発する言葉をはじめとし心に深く残る名言にも満ちている。
二男はこの先何度もこの映画を見ることであろう。