KORANIKATARU

子らに語る時々日記

山に揉まれて和気藹々

前回は昨年11月1日の日曜日だった。

この日も全く同じ時刻の電車に乗った。
午前8時、JR芦屋駅を後にする。
川沿いを北上し登山口を目指す。

芦屋ロックガーデンの入口までは半時間ほど。
家内を先頭に二男が続き、しんがりを私が務める。
ハイペースで岩山をよじ登り、前回より10分も早く風吹岩に到着した。

空一面、くっきり明瞭な青。
空気が凛と冷えて、陽射し柔らか。
海が見渡せ、大阪平野が一望できる。

絶好の山日和であった。
ほんの少し山の入口に立っただけなのに、なんとも心地よく心楽しい。

空に向かって大きく手を広げ、あああっぱれと何もかもを愛でたいような気持ちとなる。
山登りは素晴らしい。

引き続いては二男を先頭に雨ケ峠へと向かう。
しんと静まった山道のなか、家族三人のわいわいがやがやが分け入っていき、その上をウグイスの鳴き声が行き来する。
ときおりイノシシの鼻を鳴らす濁音が重低音で響く。

休むことなく歩き続け七曲の急登を経て10時半には六甲山頂に到達した。
初回に比べずいぶん楽に感じられた。
行程の嵩を知ると知らぬとでは大違いということだろう。

山頂に吹く風が強く、汗かいたカラダが急速に冷えていく。

長居は無用。
山頂からの眺めにひたる間もなくスタスタと有馬方面へ足を向ける。
緑に囲まれた静かな空間を相変わらずわいわいがやがやとひたすら下っていく。
小一時間ほどで温泉街が姿を現した。

汗ばんだ上に肌寒い。
このような場合、食事より先に風呂であろう。
ちょうど下山口を出たところに日帰り温泉場があった。
迷いなく駆け込んだ。

湯上がりに待合の自動販売機で缶ビールを買って飲む。
空の青と風に吹かれる木々の緑が目を癒やす。
ビールはよく冷え臓腑に染み入ってくる。
いままで飲んだなか、最高美味なビールとなった。

さあ腹ごしらえ。
三人並んで温泉街をぶらり散策する。

蕎麦を食べようと名店むら玄を覗くがなんと廃業となっていた。
では土山人へと方針転換するも長蛇の列ができている。

土山人なら芦屋にもある。
何もここで並ぶことはない。
下界に降りれば食事処は星の数ほど。
そもそも有馬で食事するいわれもない。

名物の揚げたて天ぷらで小腹満たしてバスを待つ。

結局、阪急芦屋からガーデンズに向かうことになった。
芦屋の土山人は昼は3時で営業が終わるのであった。

偶然に偶然が重なって訪れたのが、つるはん。
蕎麦屋だと皆で誤解し、仲良くうどんを食べる羽目になったが、何事もものは試しである。
結構いけた。

特にカレーうどんはかなり美味しく、長男にも食べさせたいと思えるほど深みあって濃厚な味わいであった。

夕飯の食材を一階の成城石井で買い揃え、まだ外が明るいうち、足取り軽く三人揃って家路についた。

息吹き返すとはまさにこのようなことを言うのだろう。
山に揉まれて、心身隅々まで洗われた。

日常の垢が落ち、自身が新品まっさらになったかのようなリフレッシュ感に満たされる。
家族そろって上機嫌。
わいわいがやがやを共有した良き一日の和気藹々が絶えることなく引き続く。

充実感込み上がってくるような、生きて在ることの幸福を肌で感じる。
山登りが多くの人を魅了して止まない理由が分かったような気がした。

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