土曜日であっても家内は朝から忙しい。
朝食を作り弁当を作り携行用のおにぎりを握る。
わたしはその横で蕎麦を茹でネギを切り、家族3人分のサイドディッシュの支度をする。
蕎麦は前日、名店みかどで買ったものであった。
石臼挽きの手打ち、いわば作品といった蕎麦である。
店主の助言どおり大鍋で一束ずつきっちり40 秒茹で水で冷やして大成功。
美味しい、と皆が口を揃えた。
このように何の変哲もない日常の時間を過ごしつつ、その一方、これまでの習慣だったヨガやジムに行くことがなくなった。
会費掛け流しといった状況での模様眺めが長期化していく様相である。
それでもやはりカラダを動かしたい。
クルマを芦屋に停め、そこから歩くことにした。
満開の桜が華やか街を彩り、空は晴れ渡り隅々まで青一色。
そんな景色のなかを通り、わたしたち夫婦は六甲山頂を目指した。
前回は家内のハイペースに合わせて息が上がったので、序盤、わたしが前を行くことにした。
カラダを傾斜に少しずつ馴染ませるようにゆっくり進む。
ほとんどひと気のない山道を登って頂上まで2時間10分。
前回とほぼ同じ。
無理のないペースが楽でかつ均せば最速。
そう身をもって知った。
有馬に向かって下って、途中の休憩エリアで昼食をとった。
木々が初夏の風に揺れ薫りたって実に爽快。
山腹の所々にこぶしの花が咲いて賑わって見え目にも鮮やか。
そんななかで食べるおにぎりは格別だった。
梅や玉子焼の素朴なおにぎりも美味しかったがチャーハンおにぎりも絶品。
アサリで出汁をとりプリプリのエビなど入って隠し味はタマネギ、そのほのかな甘みが口内にふんわりと行き渡った。
家内との他愛のない昼食の一場面であったが一生ものの思い出になる、とわたしは思った。
下山しまっすぐ温泉に向かった。
前回同様、御幸荘の金泉に入ることにした。
案の定、他に客はおらず貸し切り状態。
露天の湯につかりただただ青い空を眺めて弛緩した。
ことのほか心地いい。
青空は生きるのにプラス。
精神に好作用をもたらすようである。
一時間ほどで家内と合流し帰途についた。
JR芦屋駅のイカリスーパーで赤ワインとその他各種食材を買って家に着いてすぐ家内は夕飯の支度にかかり、わたしは指示に従い手伝った。
山に登った日はすき焼き。
肉が山盛り投入され、肉は当然美味しいが、先日丹羽で買った葉タマネギやごぼうといった野菜もいい味出して肉との相性が抜群だった。
テレビでは新型肺炎についての報道が続く。
深刻の度は増す一方のようである。
恐怖の寸法がいまだ正確に推し量れず、今もって画面の向こう側の話といった実感ではあるが、わたしたちが属すこの世界の出来事であることに違いなく、その恐怖は侮れないと最大限の注意を払うべきなのだろう。
家族全員に注意喚起し日常のなかの非日常を皆で生き抜いていくことになる。