事務所に戻ると家内が何やら手伝いをしていた。
素麺の差し入れがあったので、わたしはコンビニで買ったばかりのまぜそばを即座物陰に隠した。
家内特製の素麺を食べつつ本日の二万語に耳傾ける。
天満橋あたりを歩いていると、地図を矯めつ眇めつしている一人の外国人女性に目が留まったという。
きっと道に迷っているに違いない。
家内は歩み寄り、声をかけた。
案の定、彼女は迷子になっていた。
お初天神を探している、というから見当違いも甚だしい。
そこで家内は若き外国人女性に持ちかけた。
お初天神よりここらでは大阪天満宮がおすすめである。
ちょうど道中だからと手招きした。
歩くこと10分、いろいろなことが分かった。
彼女がケープタウンから17時間かけ釜山経由で日本にやってきたこと。
友だちと二人で来たが今日は別行動であること。
友人は今頃はしゃいでいるだろうが、彼女はUSJに関心持てず、お初天神の後は通天閣を訪れる予定であること。
そうこうしているうち大阪天満宮に到着し、お参りの仕方を家内は彼女に教えた。
二礼二拍一礼が終わって、彼女は家内に聞いた。
ところでここは何の神様なのか。
家内は言う。
ここで祈れば試験にパスできる。
わたしは息子のために祈った。
それで彼女は驚いた。
息子がいるような歳には見えない。
またまた、と家内が言う前に、彼女は言葉を継いだ。
私には恋結びの神様が必要なので、お初天神に行かねばならない。
そう言って、彼女は英語のガイドブックを見せてくれた。
恋の神様として確かにお初天神が紹介されていたが、そんなこと大阪人も知らないことではないだろうか。
南森町から地下鉄に乗り東梅田で降りた。
お初天神まで案内し、アドレスを交換しそこで別れた。
ケープタウンに来るよう誘われ、息子が訪問したときにはよろしくと家内は伝え手を振った。
そんな話を聞きつつ素麺を食べ、背後の会議テーブルに座って用事している家内の気配を感じつつ、わたしは今日この日記を走り書きしている。
わたしが日記男であると悟られぬよう、今日はここらで筆を置くのが適切のようである。