家に帰れば家内がクルマを出してくれるので楽である。
わたしは着替えるだけ。
向かうはジム。
途中、長男のための荷物をゆうゆう窓口から発送した。
衣類などを送るはずがやはり食料も追加されている。
男風情で集まって不器用にも料理する光景などが写真で送られてくるから、そこに不足を見出し家内はあれやこれやと荷を詰める。
おそらく来年、長男は北米に長期で滞在することになる。
そうなると食料の送達は容易ではなくなり、そうそう顔も出せない。
いまのうち、という思いが家内の胸のうちにあるのだろう。
二日ぶりのジム。
序盤は負荷をきつめに感じたが、次第に慣れて乗ってきた。
終わる頃には気分爽快。
引き続き家内の運転で食料買い出しのため西宮阪急に向かった。
よそ行きの、おしゃれな衣装をまとう人々のなか、わたしたちは運動着。
場違いな世界に紛れ込んだヤンキー夫婦のよう。
筋トレした余勢を駆って、わたしたちは買い物カートを普段より派手目に走らせた。
目当てのひとつであった蜂屋の餃子が完売していたが、ちょうど九州物産展が催されていて、代替として博多八助の餃子を買い求めることができた。
その他、売れ残って半額となった刺身などに恵まれ、飲み物とするバロークスも在庫あって無事調達できた。
家で早速夕飯。
餃子に刺身、そして鯛のかぶと煮と焼いたサバ。
簡素な夕飯を済ませ風呂にも入り、家内が録画していた『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』第4話を夫婦で見始めた。
山の手に住む奥様らの受験などを巡るマウント合戦が実に面白い。
飲んだくれの精肉屋の娘なのに、父はシドニーの銀行家で叔父はオーストラリアで歯科医をしていると出自を偽ったりするなど、どこかの誰かに重なり合わさるような親近感湧く小ウソと見栄が連発し、それら虚飾の行方から目が離せなくなってしまう。
と、インターフォンが鳴った。
時刻は午後10時半。
二男が鍵でも忘れたのだろうか。
階下に降りると、隣家の娘さんであった。
家内が出れば長話となったであろうが、わたしが出たので会話は5秒も続かなかった。
家内が隣家に差し入れた肉じゃがの容器と手土産を受け取って、わたしはリビングへと引き返した。
ほぼ同時、二男が帰宅しわたしたち夫婦が座るソファの間に腰掛けた。
明日は部活の朝練があって5時起きで、その後、学校の実力テスト二日目を迎えるという。
ドラマの登場人物たちより彼のほうがいとも涼しげハードな日々を送っている。
あそうそうと家内がその日買ってきたズボンを取り出し二男に試着させた。
ヒップのシルエットが実によくわたしたちは結局ドラマそっちのけで二男の体躯に見入ることになった。