朝、蝉が鳴いて、家内と顔を見合わせた。
いよいよ夏が到来したのだった。
だから気分が盛り上がった。
初物となるバックコーラスに心を弾ませ、夏らしく冷やしそうめんをすすった。
蒸し暑さに一服の清涼が添えられて、この風情、まさに日本の夏の光景と言えた。
まもなく二男から電話がかかってきた。
朝一番、無事に食料が届いたとのことであった。
併せて、動画が送られてきた。
机の上でページを繰り、筆記具を走らせる。
二男の手元が映るだけの、見ようによっては単調で退屈な動画であったが、夫婦で見入った。
ちゃんと勉強もしている。
冗談めかしてはいるものの主張明確な彼なりのアピールだった。
これで家内は一日機嫌がいいのだから、食料のお礼として最も適切な対応とも言えた。
ほどなくして長男からの電話も鳴った。
用件は荷物のことではなかった。
アジア地区の選抜メンバーとして外資系金融機関のインターンに選ばれたとのことだった。
それはめでたい。
わたしたちは蝉より賑やかに歓喜した。
どこに縁があるか分からない。
これもまた貴重な選択肢のひとつ。
忙しい夏になるだろうが、皆で精一杯がんばろう。