日曜の朝、J-WAVEを聴きながら武庫川を走り、午前中には家内とクルマで家を出た。
快晴の2号線を神戸方面に向いて、まもなく芦屋のロイヤルホスト。
窓側の席に腰を落ち着けた。
ファミレスは作業にうってつけ。
いつのことだったか、星光33期の姜昌勲くんがそう言っていた。
試してみると実にいい。
電源を抜き差しされてリセットされる電化製品みたいに「やる気」が息を吹き返すから不思議なものである。
家内は勉強に取り組んで、その傍らわたしは仕事を進め、ときおり質問に答えた。
作業がはかどり、案外コーヒーも食事も美味しい。
今までの人生はなんだったのだろう。
もっとファミレスを活用すればよかった。
わたしより先、集中の場として子らはすでに「外」を利用している。
もっぱらスタバなどカフェを作業場所にしているようだから、ファミレスもいいと助言しておかねばならない。
そう思いついたところで内なるスクリーンに子らの姿が映し出され始めた。
小さい頃、彼らはわたしの書斎で勉強に取り組んだ。
机の端にちょこんと座ってドリルなどをこなし、大半は雑談して過ごした。
高学年から中学高校にかけては、事務所が根城になった。
休日の朝、一緒にクルマで出発し課題に没頭し、合間合間、食事したり映画をみたりし帰りは風呂に寄って帰宅した。
父子コミュニケーションの黄金時代と言えるだろう。
思い出のなか当時のリアルな労苦は抜け落ちる。
濾過され残るのは幸福感のみ。
やはり子育ては素晴らしい。
休日の2号線を行き交うクルマをぼんやり眺め、パスタとドリアを分け合って家内が言った。
子らが小さい頃、ファミレスをもっと活用しても良かった。
食べるものがたくさんあって子どもたちは大喜びしたに違いない。
胸の内、わたしは思う。
子らが小さい頃、何度かファミレスでの食事を提案したことがあった。
家内は忘れているようだが、決まって却下された。
口にするものにこだわる家内であり、当時、その選択肢からファミレスはきれいさっぱり除外されていたのだった。
だから、家内の目を盗んで子らと来た。
ここ芦屋のロイヤルホストも大切な思い出の場所。
小さかった頃の息子を連れ、男だけで食事した記憶がいまも鮮明に残っている。
そんな回想にひたりつつ、しかしいちいち口にはしない。
言えば、「ずるい」との話になりかねない。
頭に浮かんだことの大半を胸の内に留める。
上手に生きるため必ず心得ておかねばならない作法と言えるだろう。
午後3時を前に家内のiPadの充電が切れ、引き上げた。
しかしまだ陽は高く、日曜の時間がたっぷり残されていた。
前夜、長男から連絡があって部活の後輩と渋谷の映画館で『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』を観たとのことだった。
感動して泣いたというからわたしたちも見逃せない。
それで西宮ガーデンズで席を2つ予約した。
スクリーン11で座席はL20とL21で上映は17:10から。
家に戻って午後3時。
4時半には出かけようと話し、いつしかそれぞれ寝入ってしまった。
気づけば5時過ぎ。
前夜、夜更かししたから寝過ごすのも致し方ないことだった。
チケット代として支払った3,800円がパーになってしまって、なんだか切ないから頭を切り替えた。
二時間半を超える映画鑑賞を前にしたからこそ、身を入れて眠ることができた。
その昼寝代と思えば高くない。
そう自身に言い聞かせ、お代がパーになったことは家内に言わずに置いた。