早朝から業務に励み、気づけば夕刻。
そろそろ引き上げ、武庫川を走ろう。
灼熱のなか、噴き出る汗をほとばしらせて走る。
その気持ちよさを思うとカラダが疼く。
カラダに力がみなぎって、では、と思ったところで女房から電話が入った。
お好み焼き屋に行こう。
そんな言葉でわたしの頭に浮かぶ映像は、小気味よく音を立てて焼けるお好み焼きとキンキンに冷えて雫したたるビールジョッキへと移り変わった。
では、と事務所を後にして、家内の指示に従って天満橋のぽんぽこ亭へと足を運んだ。
店の前に差し掛かると、通りに面した窓際の席に座る家内の姿が見えた。
谷町筋にてこんな上品な女性はなかなかお見かけしない。
合流し、ともにビールを頼み他の注文は家内に任せた。
夕刻の早い時刻、鉄板を前にビールを喉に流し込む姿は幸福そのものなのだろう。
通りを歩く人の視線は必ずこちらを向いて、その度わたしは嬉々としてジョッキを口に運んだ。
家内が言った。
ブルーノ・マーズがまた来るらしい。
それでネットで調べて、東京ドーム公演のチケット抽選が始まっていたから、その場で申し込んだ。
家内によれば先月はソウルで公演が行われ、多くの芸能人が詰めかけ大盛況だったとのこと。
それで韓国の話題になって、お好み焼きを食べながらその見映え文化についてわたしたちは語り合うことになった。
一人あたりの高級ブランド消費額が世界一で、高級外車の購入額も同様で、おそらく美容整形の普及度も他国の追随を許さない。
「いいかっこ」することが価値の筆頭に来て、その単一的な価値を追求して互いがしのぎを削る。
なぜそうなるのだろう。
家内は言った。
なにかと落ち着かないお国柄だからでは。
なるほど。
隣国であるが成り立ちは日本と全く異なる。
王朝が途絶え、植民地となって、国家は分断され、長く軍事政権下にあり、民主化したあとも大統領が次々と逮捕される国。
かつては存在したのかもしれない歴史的なバックボーンが激流のなか所在不明となって、手っ取り早くもイージーな現世利益的「いいかっこ」が、あまねく共有される価値となる。
そう思うとそうとしか思えない。
彼の国は引き続き激流のなかにある。
だから、派生的にエンターテイメントが面白く、変化に乏しい日本が敵うはずもない。
しかし、その背景を思えば羨ましいとは思えない。
なんとなくザワザワしているから。
焼きそばを頼む頃にはそんな結論に達した。
そこから話題は海を渡って身近なところへと回帰した。
偽ブランドをみせびらかすあのインスタおばさんも、何かがザワザワしているといった事情があるのだろう。
ザワザワというワードで、いろいろなことが説明できる。
お好み焼きを食べて、わたしたちはそんな発見に至った。
そして、わたしたちについては引き続き、たとえ面白みに乏しくともこの静かな暮らしに安住できれば最上とのことで意見が一致をみて、そのときちょうどテイクアウトを頼んだタコ玉が焼き上がった。