ジムが休みだからおそらく家内から誘いの連絡がある。
そう踏んで夕刻まで過ごすが携帯はうんともすんとも言わなかった。
月火水とノンアルで過ごし、この日は飲む気になっていた。
だから夕刻、事務所近くの酒場に寄った。
近くを選んだのは、大阪市内を動く家内から連絡があるとの思いがまだ残っていたからだった。
そんな具合に適当に選んだ店であったが、これまた灯台下暗し。
なかなかうまくてカジュアルにくつろげて、いいではないか。
気に入った。
ひととおり飲んで食べ、そろそろ帰ろうと腰を上げ店を後にした。
で、電車に乗った途端に家内から電話がかかってきた。
「ご飯、誘ってほしい?」
とのことだったので、うんと答えた。
指定されたのは鶴橋のアジヨシだった。
急いで電車を逆方向に乗り換えて、鶴橋の地上にあがった。
到着するとすでに肉を焼き始めている家内の姿が目に入った。
前に座りビールを注いでもらってハラミ、ロース、アカセンといった肉を一緒につまんだ。
空腹に耐えかねていた。
そんな風にわたしは振る舞い、家内が頼んだテールスープを平然とその雫まで余さず食べ、しかしさすがに締めの冷麺を大にするのは荷が重く、中サイズにとどめた。
では二次会はワインを飲もう。
家内がそういうので店を出てぶらりと歩き、松屋町にいいワインスタンドがあるというからそちらに向かった。
適当に道を選んで気ままに進み、他愛のない会話をしつつ暗い夜道を寒風吹くなか結局は30分ほども歩き通すことになった。
ワイン屋は立ち飲みの店で他に客はなかった。
結構歩いていたが、ワインがおいしく立っていることも含めこれまた引き続き楽しい時間となった。
二人だけの夜の時間が静かしんしんと沁み入って、ワインのおいしさが格別のものとなった。
それぞれ3杯ずつ飲んで、名残惜しさを感じつつもこれ以上は飲めないのでお開きとし電車を乗り継いで家路に就いた。
そしていまや恒例となりつつある足つぼマッサでこの夜も締め括られることになった。
ところが45分の施術中、その大半をわたしは眠ってしまった。
そこで生じる気持ち良さに意識を集中してこそのマッサージであるのに、目を閉じて映画を観るような、あるいは耳を塞いで音楽を聴くようなことをしてしまった訳であるから、その空白に悔いが残った。
しかし、女房とひさびさ一緒に歩いて楽しかった。
「気持ちよかったね」といった会話を交わしながら家へと向かってわたしはそう思った。
学校からの帰り道、友だちと歩いて過ごす時間は幸福だった。
それと同じ。
歩いて楽しかった。
そんな暖かな思い出が冬の夜道を背景にふっくらと膨らんでいくのが分かった。