夜中にメールがあり、土曜早朝から対応した。
が、途中から相手がまたおかしなことを言い始めた。
2月から付き合いはじめ、当初からわたしはクイックレスポンスで一貫していた。
しかし、その始めから、相手はいろいろなことを勘違いし、その思い込みのまま暴言を吐いた。
書類がまだ届いていない、質問への回答が来ていない、何をやってるんだ。
最初は驚いたが、そのうち慣れた。
こんなこともあった。
2月分と3月分の書類を向こうが勝手に取り違え、まるで八つ当たり、早朝に電話を寄越して、散々苦情を浴びせ、その内容はわたしの人格の否定にまで及んだ。
いい大人の面して中身はガキで、プライドだけがやたらと高い。
その未成熟が感情に大きな揺れを引き起こすのだろう。
グーグル口コミからも周囲の噂からも分かるとおり、純度百のレベルで変な人であることは疑いようがなかった。
が、いずれはこちらの業務レベルを認め関係を統制できる。
そう思ったわたしも、同様に不遜であったということだろう。
大なり小なり同様のことが続き、この日は「私の仕事の邪魔をする気なのか」と自らの勘違いに起因し悪態をつき始めた。
土曜休日、朝から誠実に対応しているのに、この言い様はないだろう。
誰に雇われるかで幸不幸が決まる。
従業員をまるで下人扱いするこの人物の思想と態度に違和感を覚え従業員に憐憫の念を感じていたが、彼からすればなんとわたしも従業員のひとりだったわけであった。
しかしながら、わたしは自営業者。
そんな理不尽の風下に置かれ続ける謂われはひとつもない。
二つ返事で契約の解除を申し出て、連絡ツールとなっていたSNSを閉じるので残務処理については事務所を窓口として営業時間中のみ対応する旨、伝えた。
契約から解放されるのであれば、風上に立つのも自由。
いっちょうブチブチにとの思いも頭をかすめたが、哀れな変人に何をしたところで得はない。
休日の土曜。
空の青は無制限に青く果てしなく、冷気を縫って降り注ぐ陽射しはふんわりあたたかで、一歩外に出ただけで、ささくれは癒えた。
午前11時、ちょうど大貫の開店時であった。
日替わりランチは牛丼とうどん。
これが心に沁み入るほど美味しかった。
うちの事務所はほんとうに良い顧客ばかりに恵まれ平和。
なんと幸せなことだろう。
だから、もっと努力し貢献できるよう尽力しなければならない。
そんな気持ちがふつふつと沸き上がってきた。
時間は飛んで夜。
ヨガを終えた家内と待ち合わせて居酒屋に寄った。
息子の大学受験がやはりかなりのストレスだったのだろう。
解放されて日に日に家内は活力を取り戻している。
家内は言った。
うちのお客さんは錚々たるラインナップ。
学識高く人柄よく人間味に溢れ、素晴らしい方ばかり。
あんな人品粗悪な人と仕事するのはやめておけと家内は最初からわたしに忠告していた。
わたしは門番。
変な人間をこの平穏無事のなかに招き入れるなどあってはならないことだった。