1
こっから先は無理。
進んでしまうとそれまでの成果も含めてボロボロになる。
仕事には限界がある。
毎年そのことを痛感する師走である。
単に忙しいのではない。
こなす数量は並みではなく、手を動かせばどうにかなるといった単純なものでもない。
神経すり減る、ということを実際に体感できる。
首から上が冷気おびたみたいに霧がかってくる。
横になれば回復、といった生易しいものではない。
きつく人の手で揉んでもらってやっとのこと塞き止められた血流が回復し少しは温かみが戻ってくる。
連日限界の縁まで行って帰ってくる。
そんな年末を毎年過ごす。
2
ちょっとした時間も惜しいような朝の時間。
日曜だって関係ない。
昨日も早朝から仕事に取り組んでいた。
これから一気に加速という7;30。
長男から電話が入る。
ラグビーの支度してあった方のクルマで私は出勤したようだ。
最短で試合会場の伊丹高校へ到達できるよう、長男を途中まで電車で来させて、阪神高速池田線を突っ走った。
遅刻しそうな受験生を試験会場へと運ぶ韓国のパトカーみたいなものである。
アップする時間も含めて何とか間に合った。
サムライ月の最終日となるこの日、イラクで殉職された奥克彦氏を偲んで県立伊丹高校でメモリアルカップが開催されるのであった。
奥氏は伊丹高校出身の早稲田ラガーマンであった。
第一試合から出場するということであったが、試合を見ずにとんぼ返りする。
仕事において朝は黄金の時間。
ぐすぐすしている訳にはいかない。
3
仕事だけに占められた意識が、どういうわけか新御堂の緑地公園あたりで一瞬ゆるんだ。
日曜の朝、目に映る街が美しい。
窓を開ける。
清涼な空気が車内に満ちる。
青空をジャンボジェットが横切り、イチョウ並木の黄葉は発火寸前かという程に鮮やか輝く。
やはりこの世は生きて在るだけで素晴らしい。
仕事については一時間ほどロスしたが、寄り道の方にこそ価値があると人生の真髄を垣間見たと言えるかもしれない。
4
煩忙の合間を縫って日記を書いた。
水面で呼吸しまた潜る。
師走はほとんど潜水して過ごすことになる。