16階建のビルの地階にチムジルバンがあった。
場所は東大門。
風呂を上がり、父子三人、玄関ロビーの椅子に座ってしばらく過ごす。
前に鏡。
われら三人が映って見える。
もはや子らは一人前の体躯。
その姿に目を細めながら会話する。
空港から乗ったタクシーのおじさんはひたすら寡黙に前行くクルマをごぼう抜きしていった。
ドライビングテクは007の域であった。
ソウル中心部は道幅広くビルは巨大で東京駅周辺を彷彿とさせた。
都市設計において深い関係があるのかもしれない。
サムギョプサルの肉は分厚く美味かった。
さすがに本場、ずば抜けている。
日本で食べたどのサムギョプサルも敵わない。
通り過ぎる女性はもしかしてことごとく術後なのだろうか。
単にナチュラルさが削り取られているだけであり、それは美とは程遠い話なのではないか。
そんなトピックについてとりとめなく話し合う。
前回子らとソウルを訪れたのは五年前。
ちょうどこの日記を書き始めた頃のことであった。
塵も積もれば山となる。
五年と一口に言ってもそこに流れた時間の分量はとてつもない。
日記を見れば明らかで、鏡に映る姿もまたその時間の厚みを雄弁に物語っている。
異国にて行う五年前と今の定点比較。
感慨一入となった。