KORANIKATARU

子らに語る時々日記

家族で食事し18年前の日を思い出す

午後になって急に冷え込み、すっかり陽の落ちた街は冬の表情を見せていた。

さくら夙川から北に歩いて5分。

 

まずはコンセント・マーケットで翌朝のパンを買った。

 

もとの名はムッシュアッシュ。

JR西宮駅近くでわんさ人を集める人気のパン屋だった。

 

土曜になるとクルマ走らせしばしば通った。

ある朝のこと。

FMでJoanna WangのLet's Start from Hereが流れた瞬間が強固な記憶として残っている。

この名曲によって土曜朝のパン屋はわたしにとって幸福の象徴となった。

 

午後6時、予約の時間となってわたしたちはコンセント・マーケットの隣にあるアルテシンポジオに移動した。

わたしの前に家内、その隣に今日は塾が休講だという二男が座った。

 

先々週33期と訪れ気に入って、今回家族を伴った。

ワインが美味しく手の込んだ料理が粋でお洒落で心に響く。

 

夙川だからだろうか、流れる時間が上質に感じられて雰囲気も優雅。

芯から落ち着けるので、家族で食事するのに最適なお店と言えた。

 

18年前のこの日の朝、わたしは家内とMUCという喫茶店でコーヒーを飲んでいた。

家内の実家の近くにあり、味わい深いコーヒーを出す店だったのでたびたび訪れていた。

 

駅まで家内に送ってもらい仕事に向かった。

そのときは、お腹のなかにいる長男が地上に出現せんとする兆候は微塵もなかった。

 

そんな話を皮切りに、上品で洗練された料理の数々を感嘆しつつ味わった。

 

スパークリングから赤ワインに移り、さらにゆったり静かに時間が流れた。

息子からは学校の話をいくつも聞けた。

 

懇談に出かけた際、家庭科実習での息子の様子について家内は先生から指摘を受けていた。

それについても息子から真相を聞くことができた。

教室の一番後ろの席で机の上に足をのせ外を見ながら縫い物していたのは本当のことだが、そのとき先生はおらず靴も脱いでいた。

 

そんな男が一人くらいいてもいい。

マイケル・コルレオーネみたいなものであり、そんな奴がいた方がクラスの空気も締まるだろう。

だいいち先生の眼の前で行儀悪い態度を取ったわけではなく、靴を脱いでいるのだから不衛生でもない。

それに足を高くに置けば疲労回復にもつながる。

 

そんな話を息子と交わした。

親はこう言っていた、と彼は先生に伝え、先生はわたしのピント外れな見解に首を傾げるのだろう。

 

会計すると3万円弱。

お釣りでタクシー代がまかなえた。

 

帰宅するとまもなく長男も戻ってきた。

 

18年前のこの日の夜、地上に出現せんとにわか活発に動き出し、朝一番で元気な産声をあげた長男は、そのままの勢いで大きくなって大地を踏み鳴らしますます盛ん。

 

長男も含め家族で食事を楽しむときがもうまもなく訪れる。

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2018年10月31日午後6時 夙川 アルテシンポジオ