月末に寄る予定であったが忙しく、昨日になってようやく実家を訪ねることができた。
母を誘い例のごとく近くの寿司屋で昼食をともにした。
握りをつまんで家族の近況について話を聞く。
孫がみな元気にすくすく育って、母にとって嬉しく楽しいニュースが尽きない。
甥っ子や姪っ子一人一人の活躍が話題として取り上げられる。
うちの息子らについても最近の様子を母に語って聞かせる。
ゆっくり頷きそんな話に母が静かに耳を傾ける。
元気で丈夫。
それだけで十分。
だから孫たちは十二分に祖父母孝行を果たしていると言えそうだ。
ではまた今度と手を振って別れるが、次は年の瀬。
月日の経過があまりに早く、長ずれば長ずるほど早く感じられるというから、母にとってはいかほどの早さだろう。
一日一日がますます貴重で、嬉しく楽しいニュースはどんな些細なものでも心のなか深くに沁み入っていく。
そんな母の心模様を想像しつつ、各所まわって夕刻、事務所に戻ると黒毛和牛が届いていた。
28期松井先生からの陣中見舞であった。
カバンに忍ばせ風呂を済ませて自宅に帰る。
肉を見て家内はたいそう喜んで、今夜、子らにはすき焼きを作ると意気込んだ。
すき焼きを頭に描きつつ、わたしは絵に描いたようなヘルシー料理3皿に箸を運んだ。
かぶらの炒め煮、揚げ魚の甘酢あんかけ、タコと春雨のサラダ。
疲れていたのか角ハイボール数杯で寝入ってしまい、わたしは子らの帰りに気づかなかった。
目覚めるとわたしが寝そべるソファの下で長男が家内のヘッドマッサを受けていた。
時計は夜の12時を過ぎている。
その様子をうっすら眼で眺めて思う。
いつか息子が、この家に寄って家内を寿司屋に連れて行く。
家内にとっては、彼が顔を見せるだけで嬉しく楽しく、彼がもたらす話もまた嬉しく楽しい。
未来の寿司屋の場面が眼前の場面と重なって、そこに時間の差異はなく、まるで同時進行しているかのように見えた。