電話をかけると駅前にいるという。
改札を出て商店街に向いて歩くとすぐに二男を見つけることができた。
並んで歩いて目的地に向かう。
試験が終われば焼肉をご馳走する。
そう約束して2週間ほどが過ぎていた。
午後5時20分。
開店を前にすでに行列ができていた。
焼肉の万正。
聞きしに勝る人気店であることが一目で理解できた。
まもなく母の姿が見えた。
家内が店を予約し、うちの母にも声をかけてくれていたのだった。
二男の面構えと体躯を見て、母は目を細めた。
午後5時30分ジャスト。
店主が顔を出し店先に暖簾がかかった。
列を見て嬉しそうな困惑を見せた店主の顔が強く印象に残った。
いい人だとその瞬間に分かった。
テーブル席に座ってビールを頼み、幾つかの小品に加え、塩タン、バラ、ハラミ2人前ずつをまずは注文した。
登場した名物塩タンを見て驚いた。
薬味として添えられる刻みニンニクが皿一面を埋め尽くし、その様を見るだけで血が騒ぎ闘志が湧いて出た。
まもなく家内も現れた。
御堂筋線に遅延があって立ち往生したのだという。
全員揃って、ここからが本番。
クラシタ、上ミノ、てっちゃん、アカセンと追加して、更に次々追加していく。
二男は早速ご飯大盛りをお代わりし、どんどこ肉を食べ続け、うちの母がびっくりするほど旺盛な食欲を見せた。
食事の最中、母の携帯に着信があった。
いま息子の家族に呼ばれてご飯を食べている。
電話の向こうに話す口ぶりから、母がこの食事をたいそう喜んでくれていることが分かった。
焼肉の万正。
家内もその圧倒的な美味しさを認めた。
特にホルモンは他店を大きく引き離し、周回差をつけているといっても過言ではないだろう。
夢中で食べて一息ついて、遅ればせながら気づいたことがあった。
店内で食事する面々は美男美女ばかり。
それが側面から、万正の焼肉のグレードのほどを暗々裏に物語っていた。
少しスローダウンし、お酒を赤ワインに変えた。
これも結構おいしく家内は一層喜んだ。
時間制限は90分。
ラスト30分というところで、うちの長男へのみやげを注文した。
クラシタと上ミノ、そして薬味のニンニク。
それらを焼いて、折り詰めにいれてお会計してもらう。
四人で食べて一人あたり6,000円弱。
あり得ないほどお値打ちの勘定だと言えるだろう。
店を出ると、家内が声を上げた。
万正の隣にあるのは、名店お好み焼きのオモニ。
ちょうどそこにオモニその人がいたのだった。
家内が話しかけて、しばし記念撮影の時間となった。
母を送っての帰途、二男の提案で延羽の湯に寄ることにした。
旅行にでも来たみたいにくつろいで一時間ほど過ごし、仕上げは冷麺。
アジヨシ総本店のテーブル席に陣取って、冷麺だけを頼む。
やはり冷麺は素晴らしい。
途中アイスを買って食べながら帰途についた。
家内の手には長男の夜食に献上するクラシタと上ミノがしっかりと握られていた。