二男が所望し、家内が家族人数分の淡路島バーガーを買ってきた。
が、わたしの分がどこにもない。
見ると二男が笑っている。
わたしの帰宅を前に、ラージサイズ2つを彼がぺろりと平らげていたのだった。
その食べっぷりが微笑ましい。
代わりにマグロの漬けと神戸南京町で買ってきたというチャーシューがお酒のあてになった。
そして驚いた。
そのチャーシューの塊を見て二男が家内にこう言ったのだ。
チャーシュー丼を作って。
ラージサイズ2つを食べて加えてチャーシュー丼。
ああ、その食べっぷりが頼もしい。
先日、家内と家で映画『焼肉ドラゴン』を観た。
そのなか、焼肉屋の店主が過去を回想し言うセリフがある。
「働いたあ、働いたあ」
生き抜いた各時代をまるで地層のように輪切りにして語り、どの段においても末尾が「働いたあ、働いたあ」で結ばれる。
観ている最中は、リピートされるその言い回しがくどいようにも感じられたが、観終えて心に残ったのはそのセリフだけだった。
だから、家内との会話でもその繰り返し話法が以後頻出することになった。
今後その話法が二人の間に定着することも間違いない。
いつかこの夜の二男の食べっぷりを振り返り、どちらかがどちかに言うことになる。
あのとき、息子は平らげたあ、平らげたあ。
そして、互いじいさんとばあさんとなってからも過去を懐かしみ、くどいほどに言葉を交わし合う。
ほんとうによく頑張ったあ、頑張ったあ。
それにしてもよく働いたあ、働いたあ。
料理はどれも美味しかったあ、美味しかったあ。
いま思えばすべてが、楽しかったあ、楽しかったあ。
子どもたちはほんとうに可愛かったあ、可愛かったあ。
大阪の串カツは二度漬け禁止であるが、思い出に浸るのに制限はない。
濃厚な時間は、振り返ってこそしみじみ味わい深いのだろうと思う。