仕事を終え梅田で家内と合流した。
ヘッドスパを受けたばかりで家内は元気ハツラツ。
予約が取れないほどの人気店だそうで次は6月だという。
子育てを始めとし、長きにわたって家内は献身する側にあった。
今後は必要なケアをたっぷりと受け帳尻を合わせてもらわねばならない。
夕食に寄る店も思い当たらなかったので、何か買って家で食べることにした。
阪神の地下食はこの日も大いに賑わっていた。
人混みを縫うようにして地下食を渡り歩き、焼鳥と刺身と焼豚とワインを選んで、すべての荷をわたしが抱え、帰途についた。
電車のつり革につかまっていると長男から家内に宛てて写メが届いた。
ちょうどいまスーツを選んでいるところなのだという。
試着するごと写真が届くが、馬子にも衣装。
肩幅があるから実に似合ってかっこいい。
家内があれこれ助言し、わたしは横から首を突っ込んだ。
勤め帰りの人で込み合う電車のなか皆が不機嫌に見えたが、ひとり家内だけがとても楽しそうで幸せそうに見えた。
子が巣立ったので家には初老を前にする夫婦が二人。
夜、特に用事は何もない。
子らを送迎する予定はなく食事の用意も不要。
ゆっくりワインを飲んで、思い出話にふけって過ごすだけであった。
まもなく時刻は夜10時。
電話で話せる、二男が家内にそう告げた時間であった。
今か今かと待ちわびて10時になると同時、家内が電話をかけた。
話題は食事。
学食の飯はまずく、そこらで外食するとカロリー過多になってコンディションを崩す。
だから二男は朝も晩も自炊しているという。
こんな一面にも家内の献身の成果が表れている。
わたしのズボラが受け継がれず、ほんとうに良かった。
互い料理人同士、話題が合致し話は30分にも及んだ。
そしてこの電話によって当然のこと、家内の腕は鳴り始めるのだった。
母飯であれば息子は喜んで食べる。
そう確信しているから、もう夜なのにあれを作って送る、これを作って送ると家内の気持ちは先走っていくばかりだった。
週末は食材購入し、飯を炊き肉を焼きその他諸々仕込むことになる。
献身する側からの引退はまだ当分先のようである。