元旦の朝、実家へと向かった。
家内が作った料理を玄関に置き、そのまま父を乗せクルマを霊園へと走らせた。
雲ひとつない青空のもと、大勢の人が霊園を訪れていた。
年末の寒さがやわらぎ、絶好の墓参り日和と言えた。
父と二人で手分けして、わたしたちは徹底的に墓をきれいにしていった。
雑草を取り除き墓石を洗った。
元旦の晴天のもとそのように母らと交流し、心のなかまですっきり清まったように感じられた。
お供えをし、手を合わせ父としばらくそこで過ごした。
帰りはほぼ無言だった。
母が他界し、正月元旦の過ごし方がいたってシンプルなものに様変わりした。
できるだけ静かな正月を迎えたいと父は思うようになって、その気持ちがわたしにもいたく理解できた。
こうして毎年、父と二人だけで元旦を過ごすようになってはや3年が経ち、回を重ねるごとにわたしと父の結びつきはより強固で明瞭なものになったと感じる。
父を送り届け、わたしは家へと戻った。
家内が景気づけに肉を焼き、家族4人で遅めの朝食の時間を過ごした。
食後、息子たちはいとこたちと合流しわたしの実家へと向かい、わたしと家内は家でのんびりドラマでも見ることにした。
アップルTVで放映されている「パチンコ」のシーズン2、ネットフリックスの「イカゲーム2」、ディズニープラスの「サムシクおじさん」、さあ、どれをみようかと迷って、まずはパチンコを選んだ。
強く逞しく生きていこうといった思いが喚起され、やはり時々はいいドラマを見るべきだと感じていると、夕刻、息子たちがいとこたちを引き連れ家へと帰ってきた。
ここから賑やかな時間がはじまった。
家内が大いに張り切って料理をあれこれ振る舞い、楽しく場を盛り上げた。
このように元旦の主舞台が代替わりしていくのだとの実感を覚えつつ、わたしは甥っ子姪っ子たちにお年玉を配って、しみじみ思った。
母にこそ、こんな和やかな団らんを楽しんでもらいたかった。
立派になった孫たちをみて母はどれだけ喜んだことだろう。
たっぷりと食べ、みなは続いて難波へと繰り出していった。
東京組もいるから観光も欠かせないのだった。
眩しいほどに賑やかな輪を見送って、わたしと家内はおせち料理に箸をつけドラマの続きに見入った。
結局この日だけで、8話中7話まで見終えることになった。