KORANIKATARU

子らに語る時々日記

ほっと一息つける日が刻一刻と迫る


人生で必要なことはすべて阪神電車で学んだ。
ひととき乗れば必ず何らかの啓示を受ける。

夕刻、阪神電車に乗って事務所に戻る途上のことであった。
ある駅で沿線の女子大生が大挙し乗ってきた。

座席に腰掛ける私の前に四人の女子大生が並び立つ。
身なりはよく器量もいい。
学内においてそれなり上位を成すグループとみて間違いないだろう。

こう見えて息子二人の父。
年頃の女子を前にすれば息子の嫁としていかがであろうかという視点で見てしまう。

センターに立つ一人が饒舌だ。
彼氏について話している。
ほとんどのろけに近い。
彼氏は神のようなレスポンスなのだという。

試しにと饒舌女子が彼氏にあててラインでメッセージを送る。
皆が注視する。
まさに饒舌女子の言うとおり即座にリプライがあった。

場が盛り上がる。

饒舌女子と対となってセンターに立つ話の聞き役が、上手巧みに会話を導いて饒舌を更に饒舌にさせていく。
彼女がこのグループのキャプテン格だと窺える。
目鼻立ち整いリーダーとしての風格もある。

ただ、身に着けているものがやや上等に過ぎるように見える。
女子らのエネルギー争奪戦において、モノに依拠しそれを戦力とするタイプなのかもしれない。
モノ的自己主張が強い場合には男子も同じくモノ的位置づけにされかねない。

目を転じ、右サイド。
輪の外から話に加わるその女子は付け合せのような存在に見える。
場の趨勢に影響を与えない。
同調的にかすかな愛想笑いをだけ浮かべ続けている。
控え目はいいにしても影が薄すぎる。

注目は左サイドの女子であった。
服装はノームコア。
目立ちはしないが品が備わっている。
話の輪に関心持って加わり、でしゃばるでもなく柔らかな目で笑って受け答えしている。

次第、左サイドの女子にウケるよう、その存在を皆が重視して会話していることに気付く。
左サイドが心の拠り所。
彼女は前には出ないが、皆は決して彼女を飛び越さない。

心根よく知性もあるのだろう。
女子らにおいて味方にしておきたいといった存在に違いない。
それこそ身内にすべき人と言えるのではないだろうか。

この四人においては左サイドが好ましい。
私はそう結論づけた。


昨年は試験直前まで受験者数は公開されなかった。
開けてビックリとはまさにこのこと。
志願者数は804人。

新聞に記載されたその数字に目を留めたままゴクリと唾を飲み込んだ。
近年目にしたことのない突出した数字であった。

前年より50人以上も増えている。
この50人が烏合の衆であると油断することはできない。
最大手の塾がこの年は星光にかなり注力し相当数の受験者を送り込むとも耳にしていた。

本人の仕上がりは万全であった。
前受け校も連続で合格していたし、塾恒例の集結特訓で行われた模試においても好成績であった。
二男の学校を冠した模試については当時の長男と同等の成績を収め、長男の学校を冠した模試については塾全体で一位であった。

だからといって、やれやれ安心とおめでたい心境になれるはずがなかった。
長男の受験を通じ魔物潜むのが中学入試であると目の当たりにしていた。
皆が皆、無事にそこを通過する訳ではなく、無慈悲にもほどがあるというのが受験であった。

平常心ではとても臨めない。
最期に笑うのはおれだと気迫ほとばしらせ、周囲を跳ね飛ばすくらい倍加した活性をみなぎらせて挑みかかるくらいでないと、魔物を蹴散らせない。

今年は昨年より志願者数が減って例年並となったようだが、内訳を見れば、四科受験者は昨年よりも増え、単に三科受験者が減っただけのことのようである。

星光にとって本流ともいうべき四科受験が増えているのであるから、その敷居は昨年よりも高くなると見ていいのだろう。

しかし明るい側面に目を向ければ数百人もが合格を果たす試験であることもまた間違いのないことである。
しかるべき人はちゃんと通る試験なのだ。

67期生とその家族らがほっと一息つける日が刻々と迫っている。


帰宅し二男とともに夕飯を済ませる。

ミントのアロマで頭皮をマッサージしてもらい耳つぼを押してもらう。
専用の器具でピンポイント、各種のツボを押してもらうのだがこれがかなり効く。

日頃その存在すら忘れ歯牙にもかけず眼中にもなかった耳であったが、足裏の反射区のごとく多様なツボがあって押すとじんじん心地いい。
次第、カラダまでぽかぽかになってくる。

言われてみればそのとおり、耳はお腹のなかの胎児を象ったような形をしている。
だから、と言われてもにわかには順接続でつながりにくいが、耳がカラダ全体を集約しているという説もあながち的はずれなものではないという気がしてくる。

もっと早くから知っていればと悔やむ。
頭と神経を酷使した後の疲労回復にテキメンだ。

そうこうしているうちに長男からメールが届く。
極寒ではあるが友人もできホストマザーは優しく何とか楽しく過ごせていることが文面から窺える。

子からのメールも良薬だ。
疲れはすっかり癒えた。

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