ゴールデンウィークの谷間。
朝の道路はがら空き。
平日なのにまるで休日。
クルマがすいすい走って通勤が快適であった。
昼間も同様。
行楽モードの出で立ちが目立って休み風情がそこかしこ漂っていた。
オセロと同じ。
休日に挟まれれば、れっきとした平日も休日みたいなものになる。
おかげでかかってくる電話は極小で届くメールもごく僅か。
だからさっさと仕事も終わって手が空いた。
夕刻、ちょうど梅田にいた家内と待ち合わせることにした。
たまたま帰途にあった下の息子もラインに首をツッコミ合流するという。
落ち合う駅を決め、わたしは改札を出てすぐのところにクルマを横付けした。
家内が現れ、まもなく制服姿の下の息子も現れた。
焼肉がいいと息子がいうので、ナビを出屋敷の味楽園にセットした。
普段混み合う店ではあるが、ゴールデンウィークだということで空いていて予約も不要。
座敷にでんと腰を据え、肉を注文していく。
まずは塩タン、そして今日のおすすめだというハネシタ、その他、美味しい所をずらずらと頼んでいく。
息子がいるので頼み過ぎということにはならない。
家で食べる焼肉も美味しいが名店で食べるともっと美味しい。
それを生業にしているだけのことはある。
素材においても味付けにおいても素人が敵うはずがない。
肉が場を盛り上げ、わたしたちは青春の岐路について話し合った。
舌鼓が合いの手になるものだから、議論深まりその厚みは増す一方となった。
そのようにして腹も膨れて話も一巡。
ちょうど水入りのタイミング。
冷麺のお出ましと相成った。
先日行われた南北会談において冷麺が果たした役割は計り知れない。
当然、わたしたちの焼肉の締めにも欠かせない。
冷麺なければ画竜点睛を欠くという話であり、実は主役が冷麺とさえ言ってもよかった。
その美味に家族一同忘我となる。
が、さすがに家内。
この場にいない長男のことを忘れるはずはなかった。
家内が追加で肉を注文した。
味楽園名物の骨付きカルビ。
それが今夜、長男の夜食として供されることになる。
眼前にしてわたしはその巨大さに驚き思わず写真に撮った。
日刊ゲンダイくらいのサイズはある。
どうやって焼けばいいのだと戸惑っていると大将がにこやかに駆け寄ってきて、お手並み鮮やか手際よく焼いてくれた。
ハサミで切ってタレを降り注ぎ、テイクアウト用に包んでくれる。
かなりの分量ではあるけれど、息子が食べるのであるから多すぎるということにはならない。
こうして現在完了形の満腹三人は巨大カルビを携えて家路についた。
まもなく家に帰ってくる現在進行形の空腹一人は、さぞかし喜ぶことだろう。