JR環状線が動いておらず地下鉄を使う。
谷町九丁目にて乗り換え天王寺で下車。
割烹天田はそこから歩いて5分の場所にあった。
グーグルマップを片手に見ながら未知の路地へと歩を進める。
まるで秘境。
高い城壁に囲まれ入り組んだ迷路を行くような感があり、異郷の旧市街を彷彿とさせる。
地図がなければたどり着くことは不可能、そう思えた。
日中から湿度高く夜になって小雨降り出し蒸し暑さに輪をかけた。
所狭しと軒を連ねる食べ物屋から発せられる匂いと熱気に気圧される。
ただ天田の一角だけが涼やか閑寂であった。
路地の入口を前門と考えれば、なかなかの趣向と起伏に富んだ玄関アプローチと言えた。
わたしが一番乗りで次いで森山。
続いて章夫とタコちゃんとシバテンが一緒に現れ、キジがやや遅れ最後にカネちゃんがやってきた。
ただの飲み会。
集まる目的は何もない。
強いてあげれば、地震後の生存確認。
安否を確認したあとはただ食べて喋って飲むだけ。
構える必要なく気心知れているので、芯からくつろぐ憩いの時間となる。
日頃わたしは愚痴などこぼさないが、この日は少しばかり友人相手に吐露してみた。
若い頃は家でもたまに愚痴をこぼした。
仕事人となって歳月流れ、やがてそれが無意味であると学んだ。
家で愚痴れば家族を心配させるだけであるし、周囲のエネルギーを損なうだけでなく、問題解決に向けての自身の気迫をも削ぐことになる。
いいことなど何もない。
だから、滅多なことでは愚痴らない。
が、33期の集まりでは別だろう。
愚痴はたちまち浄化され、具体的な解決の道筋がその場で見出されることになる。
そのうえ、ちょっとした共感も得られるのであるから百人力。
ふと思う。
わたしには縁遠い話だが、たとえば高級クラブで美女数人をはべらせれば一体いくらかかるのだろう。
33期に美女はいないが、これだけの面子を同席させた場合、フィーで言えばかなり高額に上ることは間違いない。
たとえば、この日、前に森山がいて右手にはタコちゃん左手にはカネちゃんで斜め前にはキジがいてその横には章夫がいてその真向かいにシバテン。
そんな海千山千の高度専門職6人の頭脳をほしいまま動員しアウトプットを頂戴できるのだから、これはもう破格お値打ちと言うほかないだろう。
そのように過ごして元気になって、積もる話はまだまだ尽きない。
飲み会の2時間や3時間ではとても足りない。
ではまた今度と次回飲み会を約束し、店の前でお開きとなった。
帰りは章夫と電車に並ぶ。
島田くん、章夫は元気だったよ。