銅で十分。
心からそう思えるタイプなので、インド映画『ダンガル』の父が金メダルだけに執念たぎらせる姿に気圧された。
が、この作品から生きるための基本中の基本を教えられたような気がする。
金、銀、銅。
目指す勝利のレベルに差はあっても勝利は勝利であってどれも生易しいものではない。
それに比べて負けることの楽さといったらないだろう。
この広い世の中、敗北することほど簡単なことはない。
戦略や方法論など持ち出す以前に、勝つにはそもそも気合いが必要で、劣勢に置かれても怯まず、最後まで絶対に諦めない粘りも不可欠。
すごすご引き下がるのなら、格下の相手にも圧倒される。
これはスポーツに限らず学業や仕事でも同じことだろう。
いくつも難所が訪れる。
そこを避けては前には進めず、狙った成果は遠のくばかりとなる。
仕事だったらとても家族など養えないというこことになる。
腹をくくって歯を食いしばりぐっと重心落として向かっていくしなかい。
押し返されても粘りに粘って持ちこたえる。
この正反対でいいのならどれだけ気楽なことだろう。
負けることはいともたやすく、その脱力の甘美に憧憬さえ覚えてしまう。
しかし負けてばかりでは明日が思いやられる。
たまに勝利がなくてはならず、そしてたまに勝利するだけでも簡単ではなく常に勝とうとの気概が必要となる。
負けられない。
この意気地の有無が命運を握る。
これこそが生きるための基本中の基本。
それを子にしっかりと伝授するのが親の役目であると映画『ダンガル』が教えてくれる。
主人公は戦いに臨み、ことあるごとに父の助言を思い出す。
それが決め手になってあらゆる難局を切り抜ける。
最終的には父が不在であってもその力を喚起できるまでになった。
ラストシーンでは涙ぐむ。
子の達成ほど親の心を満たすものはない。
わたしたちは意気地の乗り物。
親は、子を強める存在、不在になった後も子を励ます何かであるべきなのだろう。