KORANIKATARU

子らに語る時々日記

ベンチに腰掛け星を眺めた

昼に二男が実家を訪れた。


わたしは夕方に寄る予定であったがその旨を二男が父に話したようだった。


それで父から電話が来た。


敬老の日のお祝いで町内会から父と母それぞれに千円ずつ支給があった。

そのお金で夕飯を用意するから何も買ってこないように。


いつもなら事前に連絡などせずあれこれ仕入れてから実家に向かう。

今回は親の言葉に従った。


夕方5時。

実家に到着すると既に食事の準備は整っていた。

寿司が並び肉が大皿に盛られていた。


とても二千円で買える分量ではなかった。

肉の値段を母に聞くと百グラム1300円だと言うから大奮発と言えた。


冷蔵庫から発泡酒を取り出し各自のコップに注ぎ、父と母とわたしの三人で小さくささやかな乾杯をした。


話題はうちの息子たちのこと。

先日長男が挨拶に来たときの模様が嬉しそうに両親から語られ、この日の昼にやってきた二男の様子もこれまた嬉しそうに語られた。


長男は二人の健康を気遣い、次の日に試合を控える二男は力強く抱負を語ったという。


いまこの場に不在であっても食卓を盛り上げる。

孫の存在は大きく、もしわたしに子がいなければ、代替の話題など何もなかっただろう。


楽しく語らい料理も美味しく、そして両親が着実に歳を重ねていることをいつにも増して実感することになった。


長居して疲れさせないよう一時間ほどでわたしは実家を後にした。


途中で風呂に寄り、小一時間電車に揺られて駅を降りた。

家へとすぐには向かわず公園に足を向けた。

そしてベンチに腰掛け、星を眺めた。


夜気が風呂上がりの肌に心地いい。

真上に夏の大三角が見え、南の空には土星と強く輝く木星が見えた。


極大の世界に身を置くと極小の思考から解放されて実に清々しい。


星とは異なり家は眼前間近にあったが、惚けたような無思考にしばしひたって日常を留守にする時間を満喫した。

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2018年3月13日午後6時 台湾九份