KORANIKATARU

子らに語る時々日記

昨日のこと

駅が近いのでクルマに乗る必要はあまりない。


台風が近づいた三連休初日の雨降る朝。

エンジンかからなくなって久しいクルマをケアしようとJAFを呼んだ。


応急処置によってエンジンがかかり、JAFのおじさんは言った。

このまま一時間はエンジンをかけ続けておいてください。


で、その間、わたしは電話連絡業務など行い、家内は家事に勤しんだ。


学校が休みと分かって明け方までラグビーを観ていた二男が起き出し、家内が朝食を支度するが朝からステーキなので驚いた。

わたしにあてがわれた納豆ご飯とは大違いである。


昼にかけ風雨が強まった。

自習室に出かようとする二男を制して家で勉強するよう告げ、わたし達夫婦のみ出かけることにした。


二時間近くエンジンをかけたままのクルマに乗り込み一旦エンジンを切って、再度かけてみた。

うんともすんとも言わない。


バッテリー自体が死んでいるに違いなかった。

このクルマで出かけていれば出先で立ち往生することになっただろう。


わたしたちは隣に停めてある普段使いのクルマに乗ってジムに向かった。


家内がいると手を抜けない。

檄を飛ばすセコンドが真横にいるのと同じこと。

顔面を歪めつつ声まで漏らし、なんとか言われたとおりのメニューをやり切った。


たっぷり念入りにカラダを動かし約二時間。

午後2時前にジムを出たが隣接する牛萬のラストオーダーは1時半までだった。


ワークアウト後の焼肉。

それだけがわたしの希望であり夢だった。

皮肉にも頑張り過ぎたことが原因で、わたしの希望は潰え夢は消し飛んでしまった。


依然として雨脚が強い。

わたしたちはランチを求めガーデンズに向かうことにした。


台風のせいだろう。

ガーデンズは土曜日なのにがら空きだった。

何を食べようかと左右眺めつつフロアを歩き、大起水産に目が留まった。


待つ人がいない。

そんな大起水産を見たのは初めてのことだった。


家内の監督下、一貫一貫味わって、腹八分目で箸を置いた。


二次会は家。

飲みながらテレビでも観てゆっくり過ごそう。

そう話しが決まって、息子の土産を手に店を後にした。


エスカレーターに乗ったとき、公開されたばかりの映画の垂れ幕が視界に入った。

そこにはダニー・ボイルの名があった。


『トレイン・スポッティング』はイギリスを一人で旅した道中に観た映画で今も記憶に新しく、『普通じゃない』は家内の実家をはじめて訪れたとき一緒に観た映画で、その主題歌を手掛けたアッシュの曲は結婚当時ヘビロテし今も時々思い出しては耳にする。

そして『スラムドック・ミリオネア』を観たのはここガーデンズでのことだった。


観なければならない。

即座そう思い家内を誘った。


そのとき時刻は午後3時過ぎ。

次の上映は4時10分。

十分間に合う。


クルマを走らせいったん家に戻り二男に寿司を届け、その足でガーデンズに舞い戻った。


映画のタイトルは『イエスタデイ』。


ビートルズが存在しなかった世界が描かれる。

逆説的だがそれで痛感したのがビートルズの偉大さと彼らが生み出した曲の美しさとゴージャスさだった。


ビートルズの曲が存在しない世界でそれらが奏でらればまさに奇跡の現出であり、天下のエド・シーランをすら圧倒的に凌駕して、その場に居合わせる誰もが息を呑み目を潤ませた。


家内は横で観ながら一緒になって口ずさんでいた。

曲の素晴らしさを深く味わって反芻したくなるのはわたしも同じだった。


観終えて大満足。

ほんとうにいい映画だったと感想を述べ合って、息子たちにもメールを送った。


子らを送迎する車内、ビートルズもかなりの頻度で流してきた。

彼らの耳にもしっかり馴染んでいるはずだから映画を観れば感動を共有できるのは間違いない。


一階のスーパーで肉とロゼのスパークリングを買って帰宅しラグビーのアイルランド対サモア戦を観戦しつつ家内と飲んだ。


映画のなか、その世界では御歳78のジョン・レノンが登場するが印象深いセリフがあった。

家内と飲みながらわたしはその言葉を思い出し、ジョン・レノン役が誰だったのかも調べて分かってロバート・カーライルの天才のほどを思い知り、UK映画への愛もまたしみじみと深まるのだった。


是非とも夫婦で観るべき映画。

そう言えるだろう。

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2019年10月12日16:10 西宮ガーデンズ『イエスタデイ』