ジャケットもコートも不要。
こんなに暖かい師走は経験したことがない。
身軽な格好で事務所を出て一旦帰宅し、家で家内と合流。
ボディケアとリフレクソロジーを受け終えたばかりの家内は心地よさの余韻のなかにあって陶然としいつもより静かだった。
向かうは西宮ガーデンズ。
映画が始まる10分前に到着しスクリーン12のE9とE10の席に腰掛けた。
予定では三宮に繰り出し映画を観るつもりであったが、『ラスト・クリスマス』の上映が24日で終わってしまい、やむなく近所で済ませることにしたのだった。
クリスマス間近のロンドンが舞台で随所にジョージ・マイケルの『ラスト・クリスマス』が流れる。
彼の地の冷涼な空気が街を飾るイルミネーションに鮮やか彩られ、こちらに吹き込んでくるかのよう。
わたしたちは映画がはじまってすぐ暖冬の東アジアにいることを忘れその世界に引き込まれた。
主人公ケイトがトムと出会って、ちょっと不思議な関わり合いのなかトムに導かれるように変化していく。
その過程が実に甘く愛らしくて温かく、しかし、何か悲しみを予感させるから胸締めつけられて切ない。
映画のラスト。
主人公ケイトが歌うラスト・クリスマスに女子は涙を抑えようがないであろうし、男でも油断すれば涙一筋くらいは流れてしまうかもしれない。
『ラスト・クリスマス』の出だしの歌詞のとおり、まさしくハートにぐっと来る映画であった。
やはりいい映画は素晴らしい。
少しはいい人間になろうと思うから夫婦の間にも好作用が及ぶことになる。
せっかく心温まったので映画を見終わった後、夕飯は薬膳鍋にすることにした。
二種選べるスープを黒と赤にし、夫婦で鍋を挟んで熱燗を酌み交わした。
時間も遅いので締めのラーメンは食べないでおこうと話し合っていたが、店員がわざわざ薦めにくるものだからはずみで一玉注文してしまい二人で分け合った。
これがとても美味しく、2019年のクリスマスを最も強く印象づける一玉のラーメンとなった。