筋トレを終えトレッドミルで家内と隣り合う。
時刻は午後6時半。
この日の『おでかけコンシェルジュ』は奈良橿原特集だった。
麺屋いちびりが紹介され、トータルテンボスが特製ラーメンを食べる。
そのシーンに家内が気づいた。
横から手が伸び、テレビのチャンネルが変えられた。
目の毒、ということであろう。
奈良橿原の特集であることを家内に説明する。
何度か二人でドライブがてら訪れた地であるから関心がないはずはなかった。
二人してチャンネルを10チャンネルに変える。
隣り合うトレッドミルの画面はともに「かんさい情報ネットten」を映し出すことになった。
ラーメン店に引き続いてはフィレ肉専門店が紹介された。
トータルテンボスの頬張る肉が実に美味しそうに見える。
この瞬間、今夜のメニューが決まったも同然であった。
ジムを終えての帰途、クルマでコーヨーに寄ってステーキを買った。
家に戻ってすぐさま家内が手早く肉を焼き、その他のメニューも取り揃え、わたしは赤ワインを開けた。
いつものとおり二人で食卓に並んで座った。
話題は受験。
大阪星光の偏差値は案外低い。
そんな話を耳にしてきたというので、ネットで調べ日能研の偏差値表を二人で眺めた。
確かにさほど高くない。
実際に子を受験させた親として、また周囲周辺の情報に接して得た体感と大いに異なる。
こんなものではないのではないか。
そう感じるものの、出鱈目な数値であるとも思えない。
我が事になるとついつい過大評価してしまうものなのだろう。
そんな流れでタブレットのなか昔の入試の頃の写真に分け入った。
一場面一場面から当時のディティールが臨場感もって立ち上ってくる。
緊張感まで蘇った。
振り返れば、息子ら二人とも万全の仕上がりであった。
前受け2校を無事突破し、いざ本番と戦意は高揚したが、本番は実に苛酷で苦しいものだった。
必ず合格するという確信など、試験後の息子の表情ひとつであっけなく吹き飛んだ。
執行の時を待つようであって合格発表までの時間がただただ苦しい。
試験前、のびやか飛翔していた楽観的な確信は羽をもがれ地に落ちて、最悪の結果が眼前にちらついてはねのけられず、のたうった。
一歩間違えれば奈落。
そうであったと謙虚に振り返り、夫婦して今になってなお震え上がった。