午後、外出しようとしたとき財布がないことに気づいた。
血の気失せたまま、近くの牛丼屋へと駆け出した。
そこに置き忘れたに違いなかった。
仕事のことで頭がいっぱいでお腹もいっぱいになって、あろうことかテーブルの下にトートバッグを置いたまま店を出てしまったのだ。
あれから3時間以上経過している。
最悪の事態が頭をよぎった。
誰かが持って行ってしまっていたら、この月末、たいへんなことになってしまう。
つかみかかるようにして店員さんに事情を話した。
店員さんの最初の表情で店にあると分かって安堵した。
何ひとつ失われることなく無事、財布がわたしのもとに戻った。
だから仕事を終えての帰途、お祝いとしてスパークリングを買って家内と飲むことにした。
前菜は、炙りタコ。
旭ポン酢ととてもよく合う。
それにフルーツトマトと生ハムをふんだんに使ったクスクスサラダ。
トリフオイルが味わいを深めスパークリングのキレがことのほか映えた。
料理のレベルが高い。
昨日の日記で「スナック家内」と書いたが「割烹家内」に訂正すべきだろう。
続いて、鳥軟骨の炒めもの。
これは辛味のからさんどーをかけて食べた。
香ばしくてジューシーでただただ美味しい。
シメは野菜と豚肉たっぷり、比内の平飼い卵がプリプリと浮かんで食をそそるチゲスープ。
芯からカラダが温まった。
デザートは愛媛のせとか。
辛味が甘味と酸味で補正されほどよい口直しになった。
この日、フィージーで行われるラグビー国際大会に向けジュニア・ジャパンが選出された。
早稲田2年の小林賢太の名があって、同志社1年の新和田錬の名もあった。
ともに芦屋ラグビースクール出身。
小林賢太はうちの長男の一学年上。
小学生の頃からデカくて速くて強かった。
新和田錬は同学年。
ともに兵庫県大会を戦った。
まるで猿飛佐助。
彼がいたから優勝できた。
芦屋ラグビーから同時期に日本代表が二人も生まれれば素晴らしい。
いまからフランス大会が楽しみになってくる。
このように若人の活躍について夫婦で話し合うのは実に楽しい。
西大和の同期も順調に大学入試を終えたようで何より。
後は吉報を待つばかり。
家内と過ごす時間。
何もかもが平和で、新型肺炎の脅威が迫るなど実感がわかない。
日常に完璧なまでに適応しているから心穏やかで、その心の安定は確固として揺らがない。
だから危機に対して鈍くなる。
このままもし危機が土足で踏み入ってくれば、半歩逃げ遅れてしまいかねない。
無事、という語の重みを改めて思い知る。
何事もなかった。
そんな結末になることを願うような気持ちになる。