天王寺を後にし実家に寄った。
新型肺炎に関する報道が加熱する一途で緊迫感さえ漂うこの時節、知らぬうち菌を運んでうつすリスクを言うより先、親の顔を見に行くのが当然の話だろう。
親の顔を見て安心した。
コロナウイルスなどどこ吹く風。
両親ともに元気そうで、何より腹が据わっている。
母の手料理を食べ先日丹波で買った酒を父と飲んだ。
甥っ子が大学に合格し姪っ子がニュージランド留学に赴く。
孫らに活気があるから会話が弾んで盛り上がった。
帰途、ひとり二次会をひとりで企画し立花駅で途中下車した。
正宗屋のカウンターに陣取りしばし飲み直しの時間を過ごす。
みな普段どおりに飲んでいる。
が、話題はどこもかしこもコロナウイルスで持ち切りだった。
テレビで聞きかじった情報を皆で交換し合い、それでいて当事者意識は薄いように見えた。
遠くの誰かの噂話に興じているといった雰囲気だった。
ただ、常連の誰かが席を立って帰るとき、皆がその背に向け「死ぬなよ」と声を掛けるからそのたび恐怖感がリアリティを帯び空気が締まった。
同じ時刻。
家内は長男と芦屋の土山人で夕飯を共にしていた。
その様子が写メで送られてくる。
親子で仲睦まじくて微笑ましい。
次の日は二人でジムに出かけて運動し、週末は有馬温泉に行くのだという。
夫と息子であれば、迷いなく息子。
家内の選択にはブレがない。